Friday, February 1, 2019

真砂尾根の思い出

■人気

この一か月ほど、真砂尾根の記事が人気で、一日に80PVくらいの閲覧数を稼いでいるようだ。

真砂尾根…渋いルートで良きルートだった。

ここを大学山岳部の雪稜経験が少ない人たちにお勧めするのは、良い事なのか悪い事なのか分からない…ので詳細に解説しておこうと思う。

このルートの位置づけとしては、難易度としては、ルートグレード1級の本チャンルート以前、という感じの場所だ。

危険度としてはロープが出る、ということでジャンダルム以上。したがって、一般登山者クラスはお呼びではない。

また体力度としては、雪稜で2泊3日の行程は長く、当時同行者だった先輩(50代)がよれたために、参考は短縮になったため、体力度としては高く設定してあると思う。

しかし、私(40代女性で体力は平均)の体力では、まだまだゆとりがあったため、そうやみくもな体力が必要なわけではない。

また要所要所で、人工的に人に会う施設(例:駅、山小屋)があるため、比較的安全地帯との接触があり、危急時の保険が多いと言える。

したがって、きちんとした雪稜…スタンディングアックスビレーや雪洞泊、滑落停止技術が必要な山・・・・をまだやったことがないアルピニスト候補者のような人が、ほぼ確実に落ちないだろうと見込める易しい難易度の場所を長時間かけて歩いて、雪稜慣れする、というようなことに向いている。

一般に、初心者のトップは、誰でも支点の選び方が下手であり、墜落に耐えることができる支点を作ってくれるかというと、そうではない。なので、後続に落ちてもらっては困る。

後続が落ちることは考えにくいような簡単な場所をスタート地点として、経験値を積んでいく必要がある。

私が真砂尾根に行った当時、Mさんは、私より入会年度が早かったが、クライミングにはしり込みしており、まったくやらないため、5.9の人工壁でも私が彼の代わりにトップロープを張ってやらないといけない状態だった。

ちなみにMさんは、30代前半で180cm近い大男の若者である。が、登攀は見るからに下手くそであった…。

しかも、雪稜のことも、山のことも分かっておらず、雪割れがあり、そこの通過が容易に回避できるときに、ジャンプ!と後続に強要する程度の分かっていなさ、リスク認知程度の低さ、だった。

その彼が、この山行ではトップを登り、案の定、彼においついたら、スタンディングアックスビレー中に両手を放してスマホをいじっている最中であり、これが、本気モードの山だったら、「こら!」とか、げんこつ、では済まない大失態であろう・・・が、そこはさすが先輩で、彼の甘ちゃん下限はよくわかっていらしたので、大失態を大失態とならない程度の山が選んであるのである。つまり、そこは、歩いて到着できる難易度…私としても、あきれてものが言えないわ!という程度で済ませた。

あとで彼については別の山の記録で、読者にコメントを貰った…山のセンスがない人、という評価だった…。

才能がない人は、要するに山のリスクがよくわからない人、見えない人、ということだ。たぶん、下界でもリスクは管理しておらず、人任せなのだろう…親がお金を出して店を持たせてやっているという人だったが‥‥山もずっと才能がないものかもしれないと思う…。自己責任という感性が育っていないのだと思われた。

こういうところで才能が見え隠れして、才能がない山やだなーと烙印を押されているとは、彼も気がつかなかったかもしれないが、そのこと自体が才能のなさを物語ってしまうかもしれない…というような性格の尾根だ。

■ 山は弱い者に合わせるもの

一般に、山岳部、山岳会というものは、基本的に、パーティの中で一番弱い者に合わせる、という不文律がある。

この山行では、春山合宿2度目の私のほうが、3度目の彼よりも先輩に位置づけられており、彼を一人前にしてやるために、フォローをしてやらないといけないという意味だった。

他の先輩らはみんな、当然ながら彼よりも登れ、ヨセミテ経験者すらいるわけで…。通常は入会年度が少ない人のために、山の計画を作るのであるが… 結局、2年目ですでに私の名前が彼の名前より前にあるので、私は先輩側として、彼の面倒を見てやる側に入らないといけないということだった…

じゃあ、いつ私自身が、自然物を使った支点構築を勉強する私自身のための機会を与えられるのだろうか?というと、この会にいれば、一生Mさんが”一番弱い者”扱いと決まっているということなので、私にはトップを先輩の確実なビレイで歩かせてもらえる機会はめぐってこないという意味だと理解。

この会にいては、人の成長を後押しするばかりで自分の成長をないがしろにしないといけないのだということが理解できた…。という非常に悲しい理解を伴った山だった。

山の世界では、人は優しい。というか遠慮しており、分かっていない人に、君は分かっていないよ、とは言わない…。教えてあげたほうが結果的に親切だと思うのだが。

前回の春合宿も、彼のリードで登らさせられたが、トップを行かせるのであれば、それにふさわしい知識や責任感を彼に植え付けてからにしてほしいと思った…。が、ルートは簡単だったので、そこで目くじらを立てるのは大人げない、という程度だった。鎌尾根は。

30代の男性と言えば、社会ではれっきとした大人であるが、50代の先輩たちに交じれば、坊やという位置づけになってしまう… そんないい加減なトップが作った支点であるので、セカンドで登るにしても絶対に落ちれない…。まぁ、雪稜ですから、いい加減なアイゼン歩行くらいしか落ちる要素はない。が、それにしても、責任感のないトップの確保で登るということは、確保意味なしって意味なので、むしろ、フォローで登っている側のほうが責任重大になってくる。

この話を持ち出したのは、それくらい、真砂尾根という尾根が歩き主体で易しい、ということを理解してもらうためです。ピッチグレードはないですが、あえてつけるとすればⅢ級からⅣ級マイナスくらいでしょう。デシマルで言えば、昔のではなく、現代の5.2程度です。

まったく信頼度ゼロのMさんのビレイで事が済むような雪稜という意味です。当然、後続も落ちることは全く考えられないような、易しさであるのです。

途中Mさんと先輩の一人が、懸垂を一回出していたが、そこは私と別の先輩はノーザイルで普通にクライムダウンで降りてきたところだった。

なので、ロープは念のため、だ。

■ 黒部横断

黒部横断は、日本らしいアルパインが味わえる渋いルートと思うが、

http://yukiyama.co.jp/mountain/2016/03/kurobe-oudan-ito-gyouji-sato-yusuke-miyagi-kimihiro.php

大谷原→赤岩尾根 →鹿島槍→牛首尾根→十字峡→トサカ尾根末端壁(ゴールデンピラー/11P 380m Ⅵ)→黒部別山北尾根→真砂尾根→別山尾根→剱岳→早月尾根から下山

という行動の一部分を味わうことができます。

大谷原→赤岩尾根→鹿島槍 は一般ルートです。前年度の春山合宿が鹿島槍鎌尾根でしたので、黒部横断のルートのうち、鹿島槍登頂の部分を切り取って、一番易しい難易度の部分をつまみ食いする、というルートでした。

■ 『鹿島槍研究』

昨今、アルパインのルートをする人は少ないようですが、それには、ルートの調べ方を知らない、ということもあるかと思います。

ネット全盛時代、ネットで手に入る情報だけで済ませようという人たちが多いことは残念なことですが、基本的に山の難易度や困難度などは、主観であるため、その主観の把握で間違ったことになると、大きく当てが外れることになります。

それを修正するには、多くの記述や文献を読むに限ります。一つ一つは主観の集まりであっても、それが3つ4つ、あるいは10と集まると、大体のラインというのは見えてくるものだからです。

私のお勧めは、『鹿島槍研究』を読むことです。この本は、多少議論の余地がある本だそうですが、登山体系に加え、地域研究の本を読むことで、その山の中での複数のルートの困難度が困難度順に並べてありますから、一つでもそれを知ることで、自分の中の基準とマッチさせていくことができます。

ちなみに、春山では、一般ルートの赤岩尾根のほうが、バリエーションルートの鎌尾根よりも困難と思われます。

■ 体力度

また体力度は、標高差と時間を計測することで、自分なりの数値データを持つことが可能ですので、標高差何メートルを1時間で歩けるのか?は比較的体力の目安になります。

このルートでは、一時間に標高差300mが17~8kg背負って、8時間程度、歩けない体力の人は、お呼びではないと思われます。要するに冬山最低ライン。

がちなみに、私はこの山は楽勝でした。

標高差300を1時間で歩くのは、ごく一般的なコースタイムですし、17~18kgはかなり冬山としては軽いでしょう。ロープを持った先輩は、20kgくらい行っていた可能性がありますが、その本人が最初によれて計画短縮になったような(笑)? 昨今のロープは軽くダブル60mで行くのが正しいと思われます。まぁ練習でピッチを短く切って支点工作の時間が増えても良いというならば、軽量化で40mでもありと思います。体力度を下げたい場合ですが。

このルートをご検討されている方のご参考になれば幸いです。

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