Monday, June 24, 2019

トップロープvsリード

■ トップロープからリードへ

昨日は色々と考えさせられたクライミングだった。

初心者にトップロープで登らせる期間は、どれくらいにすべきなのだろうか?

というのは、私はクライミングをしたことがない一般登山者の時点で、三つ峠に行き、2度目からリードだったし、その次の半分フリー半分アルパインみたいな西湖の岩場(いわゆるゲレンデ)へ行ったときは、人工壁に通い始めて3か月のころだったが、初回から5.8でリード。マルチはその時からリードで相方に教える側だ。

その後は、すぐに小川山の(つまりフリークライミング的でシビアさが桁違いの)5.7 3p 春の戻り雪を相方と繰り返した… 

■ 育ち方

これは、あんまりノーマルな育て方じゃないのではないかなぁと。現代では。今は人工壁を飛ばすのは無理があるように思います。私も初期のころ人工壁に通いました。

《モデルケース》
習得の目安
1)人工壁 週2半年 ビレイを習得
2)人工壁のリード壁で一通りやってはならないことを習得(手繰り落ち、逆クリップその他)
3)人工壁でリードし、落ちるときに落ちそうかどうか?察知できる
4)落ちるときに声を出す習慣が身についている
5)おおよそ、5.10aをノーテンでリードできる(最低ライン)

基本的にビレイができないと、外岩に連れて行けないという風に私は育てられました。外岩=ご褒美です。

逆に言えば、ビレイができれば、登攀力は問われない(笑)。最悪プルージックで上がる技術があれば、登攀力は後からついてくるので。

これが外岩デビューと繋がるわけですが…

習得の目安として
・外岩5.6が安定的に登れる(三つ峠レベル)はないとリードさせられない

逆にフリーのゲレンデであれば、トップロープであれば、どれだけ難しくても誰でも取り付けます。

ので、海外では

1)自分が登れる易しい課題でリードして、
2)隣の難しい課題にトップロープを掛け、ギリギリに課題に挑み、リハーサルをしてから、
3)その課題にリードに挑む、

ということが普通です。

これだと、リードする時点では、ホールドのありか、が分かっているので、安全ですが、オンサイトと言うことは、結果として軽視されていることになります。

■ アルパインでは、オンサイト力が重要

将来アルパインへつなげたい場合は、と言うことかもしれませんが、オンサイト能力の養成が重要です。

レッドポインターとして成長するか?
オンサイト主体のクライマーとして成長するか?

どちらかの選択が必要なのかもしれません。例えば、アレックス・オノルドは、エルキャピタン900mをフリーソロしたわけですが、DawnWallのトニー・コードウェルのように、地上数躍メートルのトラバースで、5.15をやるのとでは、けた違いにグレード自体は違います。

トニーが100回(実際はそれ以上落ちていたと思いますが…分かりやすいように便宜上100としました)落ちながら、やっと1回RPしたグレードは、フリーソロでは出てきません。出てきたら一回の失敗で死んでしまいます。

 100回に1回の成功を求めるクライミング(RPの世界)
 100回に100回の成功を求めるクライミング(フリーソロの世界)

では、まったくやっていることの中身が違います。アルパインは後者です。

■ スピードクライミングと万年セカンドのアルパイン

余談ですが、アルパインで万年セカンドと言う世界は、スピードクライミングの世界と似ています。

こないだYouTubeで、スピードの選手とアレックスが並んで登っていましたが、アレックス君、全然遅かったです。そりゃそうですね、確実さが身上のクライマーなんだから。
(念のため、ですが、確実さが身上のアレックス・オノルドでも、一般クライマーから比べると3,4倍のスピードです)

ちなみに、スピードクライミングでは必ずトップロープです。

これは、アルパインクライミングのセカンドと同じ状況です。アルパインでセカンドがもっともやらないといけないことは

さっさと登る

です。落ちても平気なのですからリスクを取ってさっさと登ってくれないと日が暮れてしまいます。

ちなみに5年程度はセカンドでアルパインの経験を積むように菊池さんは雑誌で案内しています。

■ 日本のオールドクライマーはフリーをしない人も多数

この辺の事情は、年配のクライマーは理解していない人もいるようです。

ある山岳会に行ったら、普段ショートで今5.10cをやっているあたりだというと、アルパインでそのグレードを登るように指示され、震撼しました(笑)。年配の人からすると、だって5.10c登れると言ったじゃん、という訳なのですが、フリーをしない年配の人の指示に従うと危険だと思いました…。

クライミングの安全は両方が同じ理解を持っている、ということになります。

一般にアルパインのクライマーは悪場に強いですが、登攀グレード自体は、そう高いグレードは登れないことが多いです。昔は11クライマーで十分とされていたためです。12登れたら会で一番ということになってしまったそうです。

(が現代では5.12は男子の中ではごく普通クラスでもはや上級者ではなく、中級者と言われています。)

クライミング力は飛躍的に進化し、現代で求められている一流は、登攀と確実さの、その両方を備えていることです。高グレードを登って、なおかつ、確実で落ちず、さらに早いということです。

しかし、それはクライマーとしての最盛期に求められるレベルであるため、非常に難しく、機会を得ること自体が困難なため、高齢化も伴って、今では一般的に山岳会の長老レベルでリードされるグレードは下がりに下がって、5.7レベル、つまり初心者と同じレベルとなっているようです。(アルパインでのグレーディングが5.7と言われてそのまま受け取れるかと言うと疑問があります、2グレード辛いとみるのが安全策です)

したがって初心者からみると、指導者がそもそも登れない、指導者がいない、ということになります。(もちろん、アドバイスは得られますが。一般に同じ理解をしていないと、コミュニケーションの誤解を生み、危険が増すことも考えられます)

■ ビレイ習得の次の課題 ナインアンダーの克服

ということで、山で死なないために大事なことは、守りの技を習得してから攻めに転じることです。

ということで、クライマーにとってはビレイの習得となりますが…それはまぁ1年も頑張れば習得可能なので、それが終わったらどうするか?となりますが。

易しいグレードでのリードでリード経験を蓄積する

になります。易しいグレード、ナインアンダーです。これには海外でのクライミングがおすすめです。特に私はラオスをお勧めします。

ナインアンダーが確実にリードできていない段階でも、5.10Aのトップロープは可能なので、同時進行で続けて行くと、バランスの良い成長ができるかもしれません。

大事なことはリードを意識したクライミングかもしれません。

■ 一般的傾向

一般的傾向として、

同じグレードなら、長い課題のほうがクライミングそのものは易しい

という傾向があります。

ボルト3個の5.9よりも、ボルトが10個の5.10Aのほうが易しい可能性があるということです。

長ーい5.9は、5.10Aとグレーディングされる傾向があるからです。

ですので、短い5.10aに取り付くよりも、長いほうがオンサイトの可能性が高いということになります。

持久力をつけることにもなりますので、長い課題を狙うというのは良き作戦かもしれません。

■ 開拓者で選ぶ

開拓者の個性と言うのもあります。

テクニカル系 vs パワー系
ストレニュアス vs ワンムーブ

現代ではコケが生えた悪い課題はあまり好まれない傾向がありますが、コケくらいは沢をやっていたら普通です。しかも、易しいグレード、寝ている個所でコケが生える傾向にあるので、アルパインの練習でいいのかもしれません(笑)。ぬれぬれで雨後ひょんぐっている5.10cクラックを登った人は偉いナ~と思いました。一般にフリーのクライマーだったら避ける状況かと思います。

開拓者自身の個性により、課題の内容、課題が伝えてくるストーリーが変わってきます。

自分の好みの開拓者を見つけたら、おそらく、その人の開拓ストーリーを再度、追体験するような気持になるかもしれません。

こう言う登り方も味わいと言う意味で渋くて、素晴らしい登り方なのではないでしょうか。



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