Monday, June 17, 2019

命知らず賛美と同調圧力の結婚

■ クライミングの分類

現代では、クライミングは、

・外にあるボルダーという岩を登るボルダリング
・その模倣である、インドアジムの壁を登るインドアボルダリング

・ロープを命綱にして、できるだけロープに頼らず登るフリークライミング
・ロープを全身の手段にして登るエイドクライミング

・何十回も落ちながらトライして、やっと登れるスタイルの高難度フリークライミング

・落ちないで自然物だったら、なんでも使い、落ちること=死、を意味するアルパインクライミング

・人口のプラチックホールドを用い、落ちることを前提にしたスポーツクライミング

と様々なクライミングのスタイルがあります。

■ 命知らず賛美

その中でも、日本に独特のカルチャーとして問題なのが、

 命知らずを賛美する傾向

です。これは、アルパインクライミングと言うクライミングの歴史上の経緯でそうなっています。簡単に言えば、時代遅れの考え、ということです。

当然ですが、難易度が高くなると落ちる確率は高くなってきます。現代は、難易度的に落ちないで登る、というのはありえないレベルまで、一般の人のクライミングも高度化しています。 

■ 落ちないところしか登らないだと成長できない

100%落ちないという登り方だと、登れるところが限定されてくる、という訳です。

おそらく100%落ちないという登り方で、登れるところと言うのは、業界の平均で5.7~5.9みたいです。幅があるのは、グレーディングと言ってグレードを与える行為が安定しておらず、主観にゆだねられているためです。

例えば、5.10以降は、難易度が高くなり、落ちる可能性が非常に高くなるため、落ちること=死、を意味するルートでは、それ以上にトライする人は非常に少ないです。言葉としては、高難度マルチ、と言われています。

その希少性がどれくらいか?というと、5.12が含まれるスーパー赤蜘蛛をフリーソロで登った佐藤祐介さんは、”世界的なクライマー”です。クライミング界のアカデミー賞と言われるピオレドール賞を受賞しているくらいです。

一方で、市井のクライマーでも、落ちても死なないことが前提であれば、5.12などは、現代のクライミングレベルでは、「もはや中級者に過ぎない」と言われる登攀力でしかありません。普通ということです。クライミングジムで数年修行を積めば、若い男子はすぐに到達できるレベルです。

落ちても死なないという保険あり、で登るのと、落ちたら確実に死にますね、という保険なしで登るのとがどれくらい違うか、ということです。

■ ランナウト

用語として、ランナウト、というクライミング用語がありますが、ランナウトというのは、命綱が命綱として機能しない、と言う意味です。

ランナウトしていると、たとえロープがあっても、落ちれば、地面にたたきつけられてしまいます。

■ ピアプレッシャー

この命知らずの伝統は、イギリス→アメリカ→日本へ、と伝えられた伝統ですが、日本では、日本人独特の、

 同調圧力

によって、問題化しています。

 命知らず行為をしなければ、クライマーじゃない!と言って排他する、

ということです。つまり、

 仲間外れにしたり、
 軽蔑したりする、

ということです。

これは、一般的には、”幼稚だ”、と言う言葉で表現されているようです。

私は、これが、人格的な境界線を尊重しない日本の文化の中で、

 死者が絶えない理由

ではないかと思います。しかし、ほかの分野では、越権行為をされても死にませんが、クライミングでは死んでしまいます。

■ 幼稚なクライミングとは、どのようなクライミングか?

ギリギリで5.9しか登る能力がない人というのは、5.9でも落ちるかもしれないという意味です。

なので、5.9でランナウトが当然である課題(アルパインクライミングではよくあります)に登れば、時間の問題で、いつか死にます。

古参のクライマーが教えてくれたところによると、大学山岳部で死者が絶えない理由は、5.9しか登れないときに、ランナウトが当然のルートで、5.9にチャレンジさせてきたから、だそうです。

つまり、最初からロシアンルーレット状態で、死ぬこと確実な活動だったそうです。

しかるに、現在、古老である、どの方に聞いても、

 生き残ったのは運

だったとおっしゃいます(汗)。一般にランナウトしたルートと言うのは、山岳地帯の中で多く発生しています。

■ 怖いことを怖いというと否定される日本

日本では、

 個性

ということが尊ばれていません。

  恐怖心と言うのは、本能によります。

個々人の能力、握力、体力、リーチ、体の強さ、など総合的に、自然に察知するのが人間の能力によるようです。

怖がり、というのは、クライミングにおいては、身を守るもの、危険を察知させるもの、なのです。

しかし、同調圧力で、怖いと言うことができない羽目に陥らされ、登らされる羽目になる、ということが日本ではよく起こります。

同調圧力で死んでしまったら、まぁ、犬死ですね。

■ プライドで後に引けなくなる

それと近いものが、プライドです。神風特攻隊は、自ら志願して特攻隊になったということになっていますが…本当にそうだったと思っている人はいませんね?

同じことが、現代日本でも起こります。

とくに男性。プライドをくすぐることで、相手が後に引けないようにしてしまう、ということです。

そんな、ちっぽけなプライドは早めに捨ててしまいましょう。

■ アメリカと日本

私は、命知らずを賛美する文化はアメリカにもあると思いますが、何が違うのか?というと同調圧力であると思います。

アメリカ人は個人主義が徹底しているため、他者に同じ価値観を要求しません。

日本人は全く違います。同じ価値観でなければ仲間ではないという扱いです。

そうなると、死んだ仲間がいくら、幼稚なクライミングの結果、ただの犬死をしただけだとしても、それを賛美せざるを得ません。

生死を掛けたい人は掛ければいいし、掛けたくない人は掛けなくてもいい、

そこの線引きがきちんとできていないために、日本でのクライミングが危険なものに陥ってしまっているのは、基本的に

社会的リスク

であり、クライミングそのもののリスク、ではないと思います。

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