Thursday, November 15, 2018

トップロープからリードへの移行

■TR->リード

”トップロープで登れたから登れるはず”というのは違うかもしれない。

トップロープで登れたら、ハイ次はリード、

とすると、リードに必要な”余力”が備わっていないかもしれない。

例えば、私が初めてリードした西湖の岩場のような”ハーケンでランニングを取っている5.8”を5.8がギリギリグレードの人に勧められるか?というと、勧められない。

少なくとも、私は後輩に勧めはしないだろう。落ちた場合に、ハーケンでは…(汗)。

足で登れる垂壁に、まだ手で登っている人でも、完登できるからリードでどうぞ、と言えるか?と言うと、中間支点が、その人にとって遠くない課題を選ぶべきだと思う。

というのは、私自身がそのような状態の時に、リードを強要されて、たぐり落ちしたことがあるから。たぐり落ちはもっとも危険。人工壁ですら危険だ。しかし、やってはいけないと分かっていても、クリッピングが遠ければ、バランスが悪化し、そうなってしまう。

またクリッピング体制を作る練習も必要で、トップロープであっても、リードを意識した登りをしていない状態から、いきなりリードへ進むのはいかがなものか?と思う。

リードを意識した登りを身に着けるのには、疑似リードが最適で、疑似リードをすっ飛ばしてリードしても、リードとトップロープがどう違うのか…
・ボルトを目指して登りルートから離れないという点や、
・クリップ体制を作ってからクリップすること、
・スタティックな動き
などの意識づけができないのではないか?と思う。

■ 万年セカンド

私の最初の師匠の鈴木さんは、どんなに易しくてもリードすることが大事、という価値観の人で、それは、万年セカンドを自分の会で作ってしまった反省から出た信念だったと思う。

いかに万年セカンドを作らないか?というのは難しい。

が、早すぎるリードで怖がらせることがマイナスに働くことは確実だ。

私も新人さんに、楽しくリードする経験を積んで、クライミングの楽しみを発見して欲しい。

そこへの移行は…? 言葉で言って聞かせるべきだろうと思う。

■ 事例

事例として自分を考えてみる。

私がリードへ進むのに、背中を押す後押しが必要だったこともあった…例えば三つ峠の一般ルートの隣あたりのやつ…登れないと思っていたら、登れた。岩田さんと登っていたころだ。初めてのクラックオンサイト。アイス5級のリード。

それらを勧めてくれた人の脳裏には、おそらく、私が思考しているようなことがあったはずで、私のリードを成功へ導くために、色々な計算があったはずだ。

それが非言語で言語化されていないのが、もっとも大きな弊害なのかもしれない。

それは、

1)そろそろリードできる能力が身についたという判断
2)適したルート
の2点に凝縮されるのだが、中身は

1)リードできる能力
・ムーブにゆとりがある
・たぐり落ちが発生しないゆとりがある
・足がきちんと使えている
・クリッピング動作が正しい
・バランスで登れている
・終了点でどうしたらよいか分からなくならない
・やってはならないことを分かっている(足をロープの下にいれると落ちたとき頭が下になるなど)
・1ピン目、2ピン目までは決して落ちてはいけないと分かっている
・トラバースでは降られる

2)適したルート
・支点が強固である
・支点がその人にとって遠くない
・終了点が強固である
・その人にとって難しすぎない
・フェイス、オーバーハング、スラブ、クラック、などのクライミングの要素的な部分で、その人の課題に適している(初心者はスラブから)

他にもあるかもしれない。

人工壁でのリードは、こうした要素一つ一つを、意識に落とし込むるためのものだ。人工壁では、トップロープができたら、すぐにリードに進んでよい。が、それは、こうした要素のうち、どれが意識づいていないか?を洗い出すためだ。そのために恐怖心が使える。

怖いということは何かが身についていないということだと思う。

■ 試行錯誤して学ぶ 

こうしたことを私は失敗を通じて学ぶ学び方をしていると思う…。

人工壁に通っていた時代には、だいぶ怖い目にあった。
二つの山岳会に入っていたが、人工壁時代を共にした会Aでは、危険な目に合わせて、それで辞めていく人はふるい落とす派、のようで、今考えても、よく初心者同士のあぶなっかしい落ちれないビレイで、バシバシ落ちていたよなーと思う。私はどっかぶり苦手で最初のころは最初のハングで頻繁に落ちていたからだ。ビレイしてくれていた人も初心者で、リードしたら終了点でどうしたらよいか分からなくなっていた。

一方の会Bは、暖かく見守る派で、私が絶対登れるからと自信満々の5.5ですら、先輩がちょんちょんとチョークをつけてくれた(笑)。信用されていない。この会では、私以外の新人は3年たっても5.10Aは難しいようだった。TRオンリーしかさせてくれない会だった。たぶん、怪我をさせたくないと思うとそうなるのだろう。つまり、先輩は誰も私のビレイヤーを買って出てはくれない。ので、こんなところに居たら一生リードできないと思って、やる気がある人は、ほかにビレイヤーを探し始めてしまう。結局、他会の人と組まざるを得なくなる。他会の人とは日常的にクライミングを共有できないので、結局、危険を排除しきれなくなる。

どっちも両極端で、危険を排除しきれていない。大事なことは、どちらにも陥らず、安定的な成長をすることだ。

(リードという行為に対して初心者時代)は、(ビレイスキルが確実な人…往々にして先輩)にビレイしてもらうべきだ。

ビレイが初心のビレイヤーと組むときは、ビレイがあやふやなので、クライマーは限界グレードには挑戦すべきではない。

それでもって、落ちても安心な高さに来たら落ちてみることも考えに入れる。落ちないクライマーとばかり登ると、ビレイヤーはキャッチ経験を積めないからだ。

■ 紙からSNSへ

以上のようなことは、私が思うには、昨今の人は、かみ砕いて教えないと、多分、分からないのではないか?と思う。

分からないヤツは来なくていい、という排他的な態度ではなくて、たぶん、どこかに書いたものがある、読みたい人は読めるというのが大事なのだろうと。

というのは、昔の人に話を聞くと、みんなたくさん山書や雑誌を読んでいたらしいからだ。読んで自然に理解したのだろう。

しかし、現代では、だれも紙の本を読まない。読むのは、SNSかブログ。情報の伝播の仕方が違ってきているのに、山の世界では、それに追いついていないだけなのかもしれない。

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