登山も、クライミングも、他のスポーツと比べて、フレームワーク化が遅れている。
たとえば、危険認知を教えるべきなのに、そうはなっていない。確保理論もクライミングをするなら、どのような初級者でも最初に知るべきなのにそうはなっていない。
だが、逆説的に言うと、そのため、人を選ぶ。
言われたことをただやる人には適さない。
自分で道を切り開く人にしか適さない。
■ 自学自習
最近、思うのだが、私は常に独学の人だった。塾も行ったことがないし・・・正式な新入社員教育は受けたことがなく、”社会人のイロハはすでに知っています”、という顔をして、即戦力採用で、労働市場に入り込んだ。(実は知らなかったので、こっそり覚えた・・・笑)
独学力、というのは、今の時代の人には、本当に得る機会がないかもしれない。
最初の職場は開発だが、開発言語(プログラミング)も、まず”できます!”と返事してから、できるようになった(笑)。
なにしろ、”できるようになってから仕事します”では、仕事を干されてしまう。
市販の教科書を買ってきて一晩勉強して、何食わぬ顔で前から知っていたような顔をしないと、IT業界では生きていけない・・・
だから、資格試験に受かったから来た、という人は評価されない。たたき上げが評価される。
逆説的だが、私が開発部で評価されつづけたのは、資格が何もないのに実績があったからだ。
ので、新人さんが私のところに来て、「あの・・・すいません、IPアドレスって何ですか?」って質問をしたときには、かなりズッコケた・・・。
IPアドレスって何ですかって質問をすることは、開発者の恥であり、それさえ知らないようでは、今日、今すぐ首にしてくださいと自ら首をさしだすようなもの。
それと同じことが、クライミングで起きる。山岳会でも起きる。
地図出してくださいと言っても、きょとんとしている。あなた、何しに来たの、ということだ。
■ 通訳業と市場調査
通訳と言う仕事はその究極だ。だれでも分かることだが、日本語であっても金融業に通じていない人には、金融用語は説明がないと意味が分からない。
この普通のことが分からなくなるのが、通訳を依頼した依頼者。通訳は神のように何でも知っていると期待している。
通訳の立場に立つと、1のことを通訳するのに、最低でも10以上、怖がりでメンツを失く事を恐れ、良く勉強する人は100くらい勉強する。どの単語が現場で出るのか分からないからだ。
というわけで、1回の通訳で、通訳はその分野のエキスパートになってしまう・・・。通訳の時給は、2万円が相場だが、1時間で仕事は済まない。1時間のために1週間、下手したら一か月勉強している。
市場調査会社にしばらくいた。調査依頼が来ても、依頼自体がちんぷんかんぷん。例えば、東南アジアにおける電子電力系の普及程度を調べて欲しい、と言われても、なぁ。そんなこと、知っている人が、この世にいるんでしょうか?な質問だったりする。
依頼者が販売者なので、おたくの方がプロでしょうという感じなんだが。なので、この仕事も行ってから、やってみてから、こういう結果が出ましたけど、たぶんこんなところなんではないでしょうか?的な回答を見つける。
■ 答えのない問いに対する答え
結局、答えがないような問題、課題に対する答えを、思考錯誤しながら練り上げる、というような活動が、私には合っているのかもしれない。
ということは、現在の課題は、
腕力なし、クライミング経験なしの女性をクライマー化する大作戦中なのかもしれない???
グロービスに行って気が付いたのは、私が仕事で取り組んできたような、つかみどころのない問いに対する答えを得ると言うような、ケースバイケースの問題解決に必要なのは、知識ではなく、原則思考だということ。
原則のことを、ビジネスでは、フレームワークという言葉が使われている。
登山も、クライミングも、他のスポーツと比べて、フレームワーク化が遅れている。
たとえば、危険認知を教えるべきなのに、そうはなっていないし、確保理論もクライミングをするなら、どのような初級者でも最初に知るべきなのにそうはなっていない。
知識の中から、役立つ原則を抽出するというのは、高度な思考力が必要だ。
クライミングや登山には、市場調査のようにデータ集めに資金がかからない。本もあまりたくさんは読まなくていい。
自分の体や経験がデータだ。経験値、と言われるもの。
そこが魅力となっているんだろうな。
■ 弟子と師匠の関係
しかるに、弟子と師匠の関係は、原則(知恵)の伝達だ。
弟子は師匠の経験値をはしょることができる。師匠は、生の経験を通して、原則を抽出したにも関わらず、弟子は経験なしで原則だけを受け取ることができるのだ。
人間の学問は、みなそのようにして発展している。
電気が発明された後は、電気を発明する苦労は、あとの人はしなくて良い。
弟子のほうの役割は、その原則をさらに洗練させて行くことだろう。
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