《段階を経た山登り》
第一段階: 山の発見
第二段階: その山の調査と偵察
第三段階: その山のうち、もっともやさしいルートからの初登頂= 弱点
第四段階: バリエーションルートからの登頂 = 強点
これをエベレストに当てはめると
第一段階 1853年、ピーク15が世界の最高峰であると判明
第二段階 1921年、偵察
第三段階 1953年、初登 = 弱点
第四段階 1962年、南西稜からの登頂。66年、南壁からの登頂=強点
となるわけだが、現代は
すべての山で、強点で争われている時代
である。つまり、いくら初登でも、それは、大初冬時代の落穂拾いに過ぎない。
未踏峰の初登よりも、まだ第二登がいないような山の第二登のほうが、よほど困難であることを、たいがいの山ヤは知っている。
そりゃそうだ。名もない〇〇岩の3級、4級の岩登りよりも、ボルダーの2段のほうがよっぽど難しいだろうと誰でも分かる。
でも、山になると、みんな分からなくなるみたいで、初登!と言って喜んでいる(笑)。
困難度というのと、初めて登った栄誉、というのは、困難に対する質が違うのだ。
こういう風に言うと、”初めて登ること”、を ”困難ではない”と言って、見下しているかのようだが、そうではない。初めて登ることについては、未知という別の種類の困難が待ち受けている。やったことがない、そこを登った人がいない、ということで、
できるのか、できないのか、わからない
という恐怖がある。だから、山ヤはみんな、行ったことがないところへ行く、道なき道を歩くことを覚える、ということは、当然マスターしないといけない。
ハッキリしているのは、現代の登山という世界における、最高の冒険、というのは、バリエーションルート、つまり強点の先にあるもの、ということだ。
だから、第一線の山をしよう!という人は、早々に、
人の後をついていく山、一般ルートの山、
を卒業し、次の段階としては
既成バリエーションルートを登るだけの山
を卒業していかなくてはならない。『チャレンジアルパイン』に乗っている山を片っ端から登っていくような山というのは、トップロープでクライミング練習しているようなものであり、
未知のバリエーションルート
こそが、本番の山、本当の冒険の山、ということだ。
未知のバリエーションルートというのは、現代では大体、岩登り技術が必要で、弱点を突くような、一時代前の登り方だと、5級Aゼロだったらしいのが、現代の第一線の登山だと、5.12から先の世界になる。
そういう世界に足を踏み入れよう、とする人は、基本的に、フリークライミングで、登攀力の底上げをしないといけない。
5.9が登れる登攀力というのは、山ヤの最低ラインというか、5.9までなら、特に、クライミングムーブ(正体と側体)の習得がなくても、登れる。特に背が高ければ、ホールドが遠いなどということがないため、大体の人は登れてしまう。
しかし、5.10Aから先というのは、質的に、また別のものが必要で、ムーブの習得を要求されることが多い。もちろん、これは肉体的資質にも、よりけりで、背が高かったり、腕力で解決できたり、特別に指が強いとか、色々な事情で、習得なしで登れてしまうかもしれない。が、一般的には、10代からあとが努力の証だ。
ある人が、どの程度のグレードまで、フリークライミングのトレーニングなしで登れるか?というのは、その人の肉体的な資質による。
小さくて腕力が少ない女性だと、低いグレードでも、ムーブによる解決が必要になるが、それは、大きくて腕力がある男性だと、5.10Aくらいまでは、何のトレーニングもなくても登れることが多い。
だから、私は、152cmしかなく、外岩では5.10bが登れるくらいだが、その努力の量は、おそらく、一般的な身長と腕力の男性が5.11登るまでに費やす量と同じくらいのはずだ。
一般に、トレーニングをすれば、5.11までは誰でも…つまり、背の低い人でも、女性でも…登れる、とされているため、そこまでは行きたいなと思って努力しているところだ。
話は戻るが、
バリエーションルート=強点
である。同じAという山において、
一般ルート 弱点
↓
↓
バリエーションルート 強点
↓
もっと難しいバリエーションルート もっと強点
もっと難しいバリエーションルート もっと強点
となっている。たとえば、甲斐駒を例にとると
北沢峠ルート もっとも弱い点
↓
↓
黒戸尾根 弱点
↓
↓
黄連谷右俣 強点
↓
↓
黄連谷左俣 より強い点
↓
途中にいろいろ…
↓
↓
途中にいろいろ…
↓
スーパー赤蜘蛛 もっと強い点、登攀ルート
↓
スーパー赤蜘蛛のフリーソロ 記録レベルのすごさ
というようなことになる。一般の登山者は黒戸尾根くらいまでしか知らない。
もちろん、冬季か、無雪期か、ということもあり、無雪期よりも冬季が当然、難しい。黄連谷は、沢のぼりで登ることもあれば、アイスクライミングで登ることもあるが、どちらにしても、バリエーションルートで、登攀ルートということではない。
■ 登攀ルートの質
登攀ルートにも、質的に違いがあり、
登山靴で開かれたルートはより易しく、
クライミングシューズで開かれたルートはより難しい。
というわけで、ルートの性質を知る、という知識がないと、現代のアルパインクライミングの困難度というのは正しく評価はできない。
同じ岩場でも、例えば、インスボンには、
フリールート
アルパインルート
スポーツルート
があり、同じ5.9でもフリーの5.9より、アルパインの5.9のほうが質的に易しい。のは、困難の中に、悪さというものが加味されているからだ。さらにいえば、スポーツルートの5.9のほうがもっと難しい。悪さというものが加味されていない5.9ということは、落ちても安全で死なないということだから、安全性が担保されている分、技術的に難しくなっている。
というわけで、スポーツルートで鍛えて、その力を、より”悪さ”が加味されたアルパインルートに持って行くと、意外に簡単で驚くことが多い。”あれ?簡単だな”と思うことが多いが、おそらく、”でも、ここじゃ落ちれないなー”と思うだろう。
■ アイスクライミングについて
アイスクライミングは、基本的に遊びの範疇で、オーソドックスな冬山、冬壁という世界から、ちょっと異質の世界だ。
氷に特化した技術ということだ。
アイスクライミングは、冬山経験がなくても登れる、というのは、現代のアイスがゲレンデに特化されてしまい、いわゆるフリークライミングのショートみたいになっているからだ。ショートというのはマルチピッチでない、山頂を目指さない、ということ。
なので、アイスを頑張るというのは、アルパインクライミングのオーソドックスからは少々離れるということになるし、コンペに参加するということも、よりアルパインではなく、スポーツクライミングの様相が強くなる。現に、コンペでは、リードはしないでトップロープのみ。
特殊な遊びの部類だ。
しかし、一方で、現代は中山尾根でもダブルアックスで登る時代なので、アイスを遊びとしてやったことがある、という程度のことは、あっても邪魔にならない経験だとは思うが…。雪壁を登る程度なら、別にアイスの技術などいらない。
アイスはギアで登れ、と言われるほど、ギアに依存するクライミングのスタイルでもあり、お金がかかるクライミングでも知られる。
またアイスでは決して落ちられない。アイスの事故の多くは、技術習得が未熟なのに、リードして墜落したというもの。それは、アイスのリードをする際のリードラインの読み…弱点を読んで登る、氷の質を見極める…ということの経験値が、十分でなかった場合が多いわけだが、それはそれだけ多くの回数、氷に触れていなかったためである。回数というのは要するに経験ということと読み替えてよい。
何度も氷に触れていれば、こういう氷はやばい、と、自然に分かるものだ。だから、アイスということの安全性を考えるなら、シーズン中、毎日とまではいかなくても、毎週レベルで通える、ということが、安全性においては、まず第一の条件とすら言えるかもしれない。
氷も雪と同じで、経日変化し、一日の早い時間と遅い時間によっても、壊れやすさは違うし、シーズンの最初と最後でも違うし、暖かい日と冷えた日でも違うし、…と、頻繁に山に入って氷に触れている回数=経験、がモノをいう。
そういう環境の強みを生かせる、というのでなければ、年に1回、2回のアイスクライミングでは、リードできるまでに、10年くらいかかっても不思議ではない。
なにしろ、私は、アイスクライミング初年度、アイスは9回登っている。年に一回登る人の9年分だ。ちなみにアイスは4年目だが、年に1,2回しかアイスをしない一般クライマーより経験値が高く、合計では4年で60回くらい登っている。これは、年に2回アイスをする人の、30年分の経験値だ。
アイスのギアは一通りそろえるだけで、10万円以上はかかる。毎週使うなら元も取れようが、年に一回のギアにそれほどかけるのでは…。
そんな効率の悪い活動をするよりも、通える山で、もっとも困難なルート…誰も登っていない困難さのルートを登るための努力をする、というほうが、よほど生産的だ。
と私自身は思う…。私自身は、大のつく、アイスクライミング好きだが…
というわけで、今はフリーか、氷がなくても登れる、ドライをやろうかなぁと思っている。
■ まとめ
大事なことは、弱点=トレーニング、強点=本番、ということ。
トレーニングでは経験値をたくさん養えるということが大事だ。回数通える、ホームグランドがある、ということ。
↓
スーパー赤蜘蛛のフリーソロ 記録レベルのすごさ
というようなことになる。一般の登山者は黒戸尾根くらいまでしか知らない。
もちろん、冬季か、無雪期か、ということもあり、無雪期よりも冬季が当然、難しい。黄連谷は、沢のぼりで登ることもあれば、アイスクライミングで登ることもあるが、どちらにしても、バリエーションルートで、登攀ルートということではない。
■ 登攀ルートの質
登攀ルートにも、質的に違いがあり、
登山靴で開かれたルートはより易しく、
クライミングシューズで開かれたルートはより難しい。
というわけで、ルートの性質を知る、という知識がないと、現代のアルパインクライミングの困難度というのは正しく評価はできない。
同じ岩場でも、例えば、インスボンには、
フリールート
アルパインルート
スポーツルート
があり、同じ5.9でもフリーの5.9より、アルパインの5.9のほうが質的に易しい。のは、困難の中に、悪さというものが加味されているからだ。さらにいえば、スポーツルートの5.9のほうがもっと難しい。悪さというものが加味されていない5.9ということは、落ちても安全で死なないということだから、安全性が担保されている分、技術的に難しくなっている。
というわけで、スポーツルートで鍛えて、その力を、より”悪さ”が加味されたアルパインルートに持って行くと、意外に簡単で驚くことが多い。”あれ?簡単だな”と思うことが多いが、おそらく、”でも、ここじゃ落ちれないなー”と思うだろう。
■ アイスクライミングについて
アイスクライミングは、基本的に遊びの範疇で、オーソドックスな冬山、冬壁という世界から、ちょっと異質の世界だ。
氷に特化した技術ということだ。
アイスクライミングは、冬山経験がなくても登れる、というのは、現代のアイスがゲレンデに特化されてしまい、いわゆるフリークライミングのショートみたいになっているからだ。ショートというのはマルチピッチでない、山頂を目指さない、ということ。
なので、アイスを頑張るというのは、アルパインクライミングのオーソドックスからは少々離れるということになるし、コンペに参加するということも、よりアルパインではなく、スポーツクライミングの様相が強くなる。現に、コンペでは、リードはしないでトップロープのみ。
特殊な遊びの部類だ。
しかし、一方で、現代は中山尾根でもダブルアックスで登る時代なので、アイスを遊びとしてやったことがある、という程度のことは、あっても邪魔にならない経験だとは思うが…。雪壁を登る程度なら、別にアイスの技術などいらない。
アイスはギアで登れ、と言われるほど、ギアに依存するクライミングのスタイルでもあり、お金がかかるクライミングでも知られる。
またアイスでは決して落ちられない。アイスの事故の多くは、技術習得が未熟なのに、リードして墜落したというもの。それは、アイスのリードをする際のリードラインの読み…弱点を読んで登る、氷の質を見極める…ということの経験値が、十分でなかった場合が多いわけだが、それはそれだけ多くの回数、氷に触れていなかったためである。回数というのは要するに経験ということと読み替えてよい。
何度も氷に触れていれば、こういう氷はやばい、と、自然に分かるものだ。だから、アイスということの安全性を考えるなら、シーズン中、毎日とまではいかなくても、毎週レベルで通える、ということが、安全性においては、まず第一の条件とすら言えるかもしれない。
氷も雪と同じで、経日変化し、一日の早い時間と遅い時間によっても、壊れやすさは違うし、シーズンの最初と最後でも違うし、暖かい日と冷えた日でも違うし、…と、頻繁に山に入って氷に触れている回数=経験、がモノをいう。
そういう環境の強みを生かせる、というのでなければ、年に1回、2回のアイスクライミングでは、リードできるまでに、10年くらいかかっても不思議ではない。
なにしろ、私は、アイスクライミング初年度、アイスは9回登っている。年に一回登る人の9年分だ。ちなみにアイスは4年目だが、年に1,2回しかアイスをしない一般クライマーより経験値が高く、合計では4年で60回くらい登っている。これは、年に2回アイスをする人の、30年分の経験値だ。
アイスのギアは一通りそろえるだけで、10万円以上はかかる。毎週使うなら元も取れようが、年に一回のギアにそれほどかけるのでは…。
そんな効率の悪い活動をするよりも、通える山で、もっとも困難なルート…誰も登っていない困難さのルートを登るための努力をする、というほうが、よほど生産的だ。
と私自身は思う…。私自身は、大のつく、アイスクライミング好きだが…
というわけで、今はフリーか、氷がなくても登れる、ドライをやろうかなぁと思っている。
■ まとめ
大事なことは、弱点=トレーニング、強点=本番、ということ。
トレーニングでは経験値をたくさん養えるということが大事だ。回数通える、ホームグランドがある、ということ。
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