色々と整理して文書化しておかなくてはならない知識があり、それに今日を使う予定だ。
まとめておくのは、登山知識だ。
なぜ自分の時間を使って、そうした知恵をまとめておくのか?
そういう知恵は、伝承で先輩から後輩に伝わるものだが、伝承が途切れているからだ。
略式にいうと、
登山の伝統的な教え方 防御 → 攻撃
フレンチ式フリークライミング以後 攻撃のみ 防御力なし
昔は・・・というと、漠然とするが、防御力をあげてから、攻撃力をあげるのが登山界でのオーソドックスな教え方だ。
だから、登山学校では、クライミングより前に、ロープワークを教える。自己確保ができない人を山へは連れて行かない。プルージック登攀ができないのに、岩の登攀へは連れて行かない。
しかし、その伝統が断絶した結果・・・・おそらく、それは、ラッペルルートが台頭しはじめ、グランドアップでの登頂ではなく、登頂の無いクライミングが主流になってからだと思われるが・・・つまりフレンチ式のクライミング以降のようだが・・・
クライミング力さえあれば、落ちないのだから、防御力(技術)はいらない、
という考え方が主流になっている。
しかし、それは間違っている。クライミング力があれば落ちないのであれば、有名な登山家は誰も死んでいないだろう。
■ 危険に無防備に向かう人たち
ぼちぼちいこか という穂高岳山荘が出しているブログがある。西穂奥穂雑感と題する記事がある。
そこに二つの登山者の事例がある。
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とある日のお話、ヨーロッパのハイソなご夫婦が日本の「ビギナーズロッククライミングルート」であると聞きつけて西穂からの縦走に挑みました。
次々と現れる「困難」というより「危険」というべき難所に段々とイヤ気がしてきたらしいその若奥様を、旦那さんはなんとか宥めすかしながら、それでもようやくジャンダルムを越えてあと少しで奥穂という所までこぎつけたのです。
ところが最後の難所”馬ノ背”を前に彼女は「こんなアブナイ所を行けるワケないでショ! ワタシハモウイヤヨッ‼︎」と動けなく(動かなく?)なってしまったのです。
困り果てた旦那さんはとうとうレスキュー要請を出すに至ったのですが、通報を受けて僕たちが駆けつけてみると先のような事情であったので特に怪我をしているわけでもなく「まぁ、ほんならロープ確保しよか…」とルート工作することになりました。
そうこうする所へやはり西穂からの縦走のおじさんたちが4、5名ほどポツリポツリと馬ノ背に差し掛かってきます。
救助活動中であるので先に行っていただくことにして「どうぞ〜」と声をかけます。
すると「えぇ…」と答えるどの方も、その足取りは重くかなりお疲れの様子。
「コレ越えればもう難所はないですヨ。奥穂もすぐソコです!」という僕の言葉に頷きはするものの、何だかもうヘロヘロでみなさん通過して行かれます。
やがてロープセットも完了し、念のためショートロープで確保しながら彼女を促して馬ノ背へ取り付くと、なんと見事なバランスと身のこなしではありませんか。
そのことを後で彼女に尋ねると、ヨーロッパのドロミテなどでロッククライミングの経験はかなりあるとのこと。
でもそれは全てプロガイドとロープをつないでのクライミングであって、馬ノ背のような岩場をプロテクションもなしにひとりで歩くなんて考えられないということでした。
「うーん… そりゃあ、彼女の感覚の方がもっともなのかもしれんなぁ… だいたいにおいて、麦わら帽子をザックにくくりつけたようなおっちゃんが、ヨタヨタと馬ノ背を歩いとることの方がオカシイよなぁ」などと思いつつ、その若奥様とロープをつないだまま小屋へと向かいました。
その道すがら、結局は馬ノ背で先行してもらった方々は全て追い抜いてしまい「こらぁレスキューせなあかん人を、オレは間違えとるんとちゃうやろか?」とつぶやく始末。
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困難というより、「危険」という場所に、危険への備えもなく、行くことにならないようにしたいものです。
大事な点は、危険が何か?を認知できるということ。
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