■ ビビッと来たドライ練習会
山は生きがいとはいえ、趣味。なので、仕事であるヨガの、すごい先生のワークショップのお知らせが来たりすると、”これは、出なさいという神様のお達しなのか?!”と思案することしばし… 自分の先生に相談すると、なんとなく、いらなさそう…。そう、私はまだアシュタンガヨガではひよっこで、エライ先生のWSなんて出ても、活用できないのである(汗)。しかも、安くもない費用が掛かるのだし…。
…と思っているところに入ってきた、ドライツーリングワークショップのお知らせ…突然、
超行きたいモードに入り…、いそいそと支度を始めてしまった(笑)。
飛行機代も高いことだし、アチコチ声を掛けたけど、誰も来ると言わない。
このチャンスの大きさがワカラナイかー、ワカラナイよねー、ってそんな感じ。
小川山なら行く、って言う人もいたが、
外岩もついでに行くのは当然である。しかし、夏は天候が安定しないので、遠征で行くからには、雨でも登れる(か、他にもすることがある)っていうのは、非常に重要なポイントだ。
■ 天候が核心
前回、6月に大阪遠征(自宅の用事と絡め、クライミングはついで)では、暑いからと言う理由で、大阪から長野に移動したら、移動先がずっと雨で、何のための交通費だったのか…という結果に終わった。…のは、何もかも天候のせいである。雨だと当然、岩には登れないのだからして。
という遠征上の事情が分かっている人が、近所に誰もいないのが悲しい…と思いつつ、このワークショップなら雨でも必ず得るものがある。一人で参加するか…とため息をついていたら、アイスで知り合いのN川さんが、クルコノギ(アイスアックス)買ったとかで、来てくれると! おお~、
拾う神!ということで、パートナーも出来て、良かった~と胸をなでおろして、出かけてきた。
■ 蓋を開けてみると
蓋を開けてみると、わざわざ九州から、というので、
先輩が、ドライは行かないけど、前日、岩に付き合ってくれると言う。さらに、偶然、数日前に前の山岳会の
同期の仲間が連絡をくれた。
せっかく交通費払うのだから…と、3日あれば、1日くらいは晴れて登れるだろう、と出かけ、初日は坊子抱岩の予定で雨(残念)。しかも、30度近い場所から、19度の場所への移動で風邪を引く。
翌日も、夜半から雨。仕方なく、お魚釣りへ。この頃には、翌日のクライミングは、メンバーが増え、5名。雨でも、とりあえず集まって、
レスキュー訓練でもしようか、ということになった。(去年もやっている)
そこへ、著名なアルパインクライマーのI藤さんも来てくれると言うので…農作業繁忙期なのにいいのか?…と思ったものの、見事な快晴に恵まれた。
…結局、
6名で楽しく小川山クライミングできた♪
前日二日分の雨を取り戻した格好だ。はるばる遠征というので、地元メンバーは接待モードだったのと平日で空いていため、効率よく登れ、アップ2本、オンサイト1本、ピンクポイント1本、トップロープ3本の後、さらにクラックへ出かけ、マルチ2pを1本、トップロープ3本。良く登ったな~。お腹一杯登れた。
アップは、定番の、”トムと一緒”に行ったが、やっぱりリードは一手が遠い。去年と一緒だった。
八幡スラブは、5.9の”ビスタの夏休み”、オンサイト。”走れメロス”5.10bが結構スイスイ登れて快感。間の11aもTRで。なんか調子が良いかも!
と思って、マラ岩付近へ移動し、クラックの愛情物語をピンクでリードしたが、なんだか、これは、前に登った時の楽勝感が消えていた…。動きが固いと指摘されながら、登る。やっぱりクラック登りと、スラブ登りは違うなーと。リードで取り付くには、クラックはプロテクションセットの確実性がいる。愛情物語は、5.8と易しいので初心者のリードが多いが、事故も多いのだ。初心者はプロテクション設置も確実にしてから。
グレードだけで判断してはいけない。
死亡事故例 http://www.big.or.jp/~arimochi/info.99.10.18.achp1.html
で、隣のカシオペア軌道は、下部で苦戦するもなんとかTR。上はあまり苦労しなかった。龍の子太郎は再登(セカンド) 2P目を中に入らず、外で登りたいんだけどなー。ロープ、ギリチョンで懸垂。
ジャク豆は、もうちょっと修業が必要でした…全然、歯が立たない。ちょっとは成長したと思ったのになぁ。もうよれていたのかなぁ。再度、カシオペア軌道の核心部をやって終わり、という充実した一日でした。
夜は、ツヨツヨクライマーを囲む会で、6名で
すき焼き宴会。もう寝るよ~と言ったのが10時で、実際に寝たのが、12時みたいな宴会となりました。
I藤さんが来てくれたので、男子の
耳がダンボでした。彼は、クワンデ北壁・黒部横断の方です…
雲の上の実力者なのに、とっても親切に色々と教えてくれ、しかも、我が家の無農薬玄米の生産者でもあります(笑)
いっぱしのアルパインクライマーになるには、
5.12がセカンドでも必要だそうです。さらに歩きは
40kg担げてくれないとダメ。周囲にいる若いクライマーにぜひ影響を受けてもらいたいです。
■ドラツー
翌日は、今回の旅の目的ドライツーリングの練習会へ。これも、私は、知りうる立場にいたというのが奇跡!って感じです。
3月にアイスのコンペに出たおかげです。コンペに出て、収穫だったのは、ドライでした。アイスクライミングは、登り慣れると、確実性が出てきますから、勝負にはならないのです。ドライは、アイスとは格段に違い、
フィジカルが勝負、です。
で、おお~!と目覚めてしまったのです。時代はドライじゃーん!!って(笑)。
そう、アイスクライミングの進化形は、ドライツーリングだったのです。
それで、ドライへ行こうということで、フルートブーツと言われる、専用のブーツを買ったところでした。普通は冬靴にアイス用アイゼンをつけますが、一体型と言われていて、靴そのものにアイゼンがくっついています。
まさか9月に履けるとは!
師匠も、快く泊めてくれ、なんと、ドライ、興味ないのに、岩根に行くために、交通の手配で色々と苦労している姿を見て、可愛そうになったのか、送ってくれると言うのです…。
翌日は、あわよくばパートナーのN川さんに乗せて帰ってもらおう♪と思っていたら、迎えに来てくれたので、悪いので、とりあえず帰りにまた小川山で、岩に登って帰りました。登らせずに帰ると悪いと思って(^^)。小川山、駐車場、相変わらず混んでいました。
ドライの練習会は、非公式・非公開の会でしたが、ワールドカップの選手が3名も揃っていて、細かくムーブの指導、ギアの指導があり、小さな世帯だったため、クライマーのみんなと友達になれました☆
クライミング界は狭いですが、アイスをやる人はさらに絞られ、ドライツーリングは…さらに狭い…。
クライミングの世界でも、誤解とか、アブナイだろうという思い込み、みたいなものは根強いです…。一般的な総合山岳会では、アイスクライミングは、アブナイ、アブナイと大非難を受けるクライミングで、誰も一緒に登ってくれないです(><)。私はアイスが好きなのに…。(それは氷がきれいだからです)
でも、実は危ないのは、危ない人が危ないやり方で登るから。ドライをやると、いかにアイスが落ちないクライミングなのか、分かります。
しかし、今回のドライツーリングは、
モチベーションアップになりました。
ドライでは、ムーブが後で、
フィジカルが先なのです。つまり、筋トレが先で、ムーブが後です。
これは一般のクライミングとは逆です。一般にクライミング初心者は、筋力不足と思いがちですが、本当のところは、筋力ではなくて、単純にクライミング慣れが必要なだけだったりもします。慣れれば、ムーブで、筋力を使わずに楽に登れるのです。代表的なのは、オーバーハングの乗越のツイストです。正対で登るとかなり大変。
しかし、ドライでは逆。薄被り程度の壁でも、ドライでは、アックスを握っているので、どっかぶり課題と同じことです。つまりほとんどの傾斜がルーフ並み。つまり
体幹の力がないと、そもそもムーブが起こせないのです。
そして、大事なのがギア。ギアも、爪が刺さらなければ、まったく足ブラと同じですから…。今回は私はまったくブーツの爪が刺さらず、苦労しました。
ギアの調整から実力の一部です。
■ ギアをきちんとしないと登れない!
ギアは、あまり種類がないので、予約販売しか入手方法がなく、海外製品をみんなで買って送料分担が一番楽。ということは、グループで固まっていた方が楽です。
ブーツは
レベルアイスと言われる靴がザ・定番。アックスは今はロシア製クルコノギがよさそうです。私の足のサイズ、38では、レベルアイスは作られていないので、私のはザンバランのアイステックですが、爪をクルコノギに変更しなくては!
アックスは購入しなくては…ですが、しばらく、悩みそう…韓国のショップで買う方が安いかもしれないからです。韓国はアイス先進国なので…。
■ 教えるか教えないか問題
自分の目標を自分で立てられる、というのは、大事なことだと思いますが、右も左も分からない初心者の頃に、一通りのダメだしをもらい、
何が自分の課題なのか
などを客観的に指摘してもらうこと、つまり、教えてもらうことは、それほど、思考停止につながることではない、と思いました。
求められないアドバイスはしない
というのは、もちろん大事なことですが、巷のクライミングジムで、それは当てはまるでしょうか…?
■ 助け合い
クライミングは自分で楽しさを発見するもの、という正論があります。
が、ボルダリングジムの人工ホールドを登って楽しい、と言う人は、山、登山からスタートしたクライマーには、男性を含めほとんどいません。
何しろ、ジム、インドアなんだし。しかるに苦い薬を飲むように、これも岩に登るためだ、と嫌々ながらジム通いというのが多くの結末です…特に初級のうちは、意味ワカラナイです。私自身、ジムでは完全にトレーニング、ジムが目的ではない。
知り合いのジムのお姉さんによると、ジムへ10人初めての人が来たら、
9人は二度と来ないそうです(笑)。クライミングブームだから、次々人は来るけど、一見さんです。その一見さんのうち、1割が続けばいいほう。その続いた人のうち、半分が外岩に行けばいいほう。そのうち、1割がリードで、9割がボルダラー。そのリードする人口のうち、1割がトラッド、つまりクラックへ…と言う具合に、アイスやドライは、もう、0.何パーセントな人口になってしまいます。だって、100人新規でジムに来たって、90人はもう2度と来ないんですから(笑)。
それは、楽しみ方がワカラナイからです。楽しくないことを続ける人がいるわけがない。
私はアイスも、岩も新人さんには懇切丁寧に教えます。ドライの会では、ワールドカップクラスの選手が、まったく新人さんの私に丁寧に教えてくれました。
■ 昔は・・
昔は、岩登りしたい人は、掃いて捨てるほどいたそうです。山岳会では入会者が押し寄せて、入会者の選抜をする必要があったそうです。つまり、嫌なことをわざとして、それでも喰らいついてくる、情熱がある人だけを拾う贅沢があり、そうでない人をわざわざ育てようなんて、無駄なことはしなかったそうです。
今は時代が変わり、どっちが高グレードが登れようがパートナーは対等です。なにしろ、ビレイヤーがいないと登れないんですから。
往年のクライマーは、上下関係を持ちこむ人が多いです。それは、そういう環境…先輩の酒をかつがさせられるとか、召使い扱いされる…環境で、自分が育ったから、ですが、その流れが成立していない今の時代に、それを続けていると、は?という感じで、誰も相手にしてくれなくなります。そこら辺は、時代の差を感じます。
良いパートナー(ビレイが確実な人、体重が釣り合った人、スケジュールが空いている人、行きたいところが同じ人)は、取り合い。
■ 明るく楽しい仲間
パートナーを見つけるのは、本当に今の時代難しい。だから、相当な実力者でも、その実力を鼻にかける、という態度は許されない?というか、そうすることに合理的な理由がない、そんな時代のようです。
私が知っているツヨツヨクライマーは、みな、とっても親切に自分が知っていることを分かち合ってくれます。
私自身、後輩には、自分が有料で教えてもらったことを無料で教えています…。山岳会にも、教わったことよりも、自分が伝達講習した方が多く、あまり世話になったなぁという印象はありません。今の時代は、恩を売るだけの技術や知識の蓄積がない会も増えています。個人的には色々と恩を感じていますけど、会には恩は受けてないです。
今では山岳会というくくりを越えて、同じクライミングスタイルを楽しいと思う者同士が、年齢や性差、スキルの差を越えて、楽しく一緒に登る時代なのかもしれません。
そこでは、いつ来てもいいし、都合が悪ければ、来なくてもいい、という自由で緩やかな付き合いで、なおかつ、経験がある者が、ない者に対しては、そういう場合の判断は、こうした方がいいんじゃないのかな?などと、知恵の授けあい…世代から世代への…が、カジュアルな場で成立しているように思いました。自然な流れ、ということです。
それは、I藤さんが来てくれた宴会でもそうですし…。I藤さんは、ある程度、後輩育てと思ってきてくれたと思うんですよね。ドライの宴会でもそうです…。ワールドカップに出た人が使命感を持って、皆にクライミングを教えていました。年輩の経験値豊かなクライマーも、結局、飲みながら、山での判断の話をしたり、どう成長するか、という話をしたり、何がリスクか?という話をしたりしているのです…
これって多分、昔は、飲みとかではなく、会でやっていたんだと思うんですけど、今は、こういう形ってだけ。
会という枠を超えて、それぞれ全く違う会に属していても…地理的に非常に離れた場所にいても…
そんなことを感じた遠征でした。新しい時代の形には、まだ名前はないようですが、存在はしていますね。
目撃という程度でも、その一部となれて、本当に光栄なことだ、と感じた今回の旅でした☆
≪その他≫
・飛行機27000円往復 電車1450円 高速バス2600円
・ガソリン代3000円
・食費 5000円
・お土産 5000円
・参加費 1500円
・施設使用料と宿泊 12700円
・小川山 1200円
・宅急便 ギア送料 3600円