Friday, April 21, 2017

一般縦走からアルパインへ進むには?

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when you touch someone's life   誰かの人生に触れる機会があれば
it is a privilege           それは特権だ   

when you touch someone's heart  誰かのハートに触れる機会があれば
it is blessing            それは祝福だ

when you touch someone's mind  誰かのマインドに触れる機会があれば
it is an honor            それは光栄だ

when you touch someone's soul  誰かのソウルに触れる機会があれば
it is a triumph           それは勝利だ

when you touch someone's spirit  誰かのスピリットに触れる機会があれば
it is miracle             それは奇跡だ

------------------------------------ Dr Jeff Mullan

Thank you very much for the all who had commented on this blog.

■ 祝福

私は仕事でヨガを教えていたのですが、ヨガの教えに、

 祝福がある分野に進みなさい

ということがあります。

ヨガを始めた人が悩む最初の一つに、アルジェナ(戦士)が師匠に問う問いがあります。

 非暴力(アヒンサ)を説くのに、なぜ戦い続けなければならないのですか?

現代は、貧富の競争という名の暴力に満ち溢れています。その中で、非暴力を説くのは、つまりやられっぱなしって意味です。周囲が戦っているのですから。

アルジェナの時代は文字通りの殺し合いのフィジカルな戦いでしたが、現代で、喰うか食われるかをやっているのは、仕事です(笑)。奪い合いの対象が、”命”ではなく、”富”ということですね。

山の世界も同じで、純粋な山でも…、競争が渦巻いています(汗)。

皆の関心は ”高さ”と”数” です。

でも、私に祝福がある分野、は山でした。

■ どこからロープを出すか?を知る

ハッキリ言って、ロープが出せるところで出さないのは、ロープが要らないところで出している人と同じくらい、馬鹿っぽいです。

しかし、ロープを出さない方がかっこいいという価値観の人が多いのです…それかその反対にロープ出しすぎで、要らないようなところで出しています。

ロープが要るか要らないかは、その人のスキルによりますが、おおよそのラインがあります。境界線はジャンダルムです。

ジャンダルムは一般登山者にはロープが必要です。ヨーロッパの登山では確実にロープが出されているような場所です。落ちたら一巻の終わりだからです。

しかし、一方でジャンダルムをロープ無しで歩けないような人は、それ以上の山に行ってはいけない。北鎌尾根で墜落したような人も、です。

それ以上の山というのはバリエーションルートという意味です。例えば、ジャンで怖いような人や普通のコースタイムで歩けないような人は、前穂北尾根は無しです。大島亮吉でも墜落して死んでいるんですから。

■ 歩きも技術

登山の技術と言うものは、言葉にできない感性というような部分が多くかかわってきます。

その感性があるかどうか?というのは、歩いている段階でも、よく分かるものです…

歩くことを技術と捉えられるか、どうか?ということです。

歩くことなんて、誰でもできるじゃん、俺できてるもん、と言う人は、たぶん、登山者に向いていません。

歩き方をコツや科学と言う目線でとらえられるか?は、指導者の目で見た場合、その登山者をアルパインへ進ませることが可能かどうか?の一つの試金石になると思います。

例えば、私の夫は、歩きをそういう目でとらえていません。なので、何度歩いても、ずっと初心者です。

歩きは科学です。山ヤ歩きを身に着けるには、歩きを自分で研究したり、近所にいる自分より歩きの上手な人の歩きをひそかに物まねしていないといけません。

ひそかに物マネ…というのが、盗む、という意味です。

あるとき、ベテラン登山者のおじさんの後ろを正確に歩いていたら、「女性なのに、なかなかやるね」と言われました。”え~、俺のマネすんなよー”って意味ですね(笑)。

で、「あ、卒業だ」と思い、それ以来、マネ終了。盗み終わったってことで、自分流の歩きでやっています。

あるとき、ザイテンを歩き、怖がっている女性がいたので、「一緒に来ていいよ」と言ったのですが、とても同じ速度では歩けないそうでした。私が早いのではなく、まだザイテンに来るようなスキルがない人が、わんさか北アには来ているという意味です。

残雪期の富士山で、御殿場口から4時間で登れる人に同行してもらいましたが、歩きはそれで良いよ、と言ってもらいました。

■ 4級がない!

ロープが出る山をするようになって、ハイキングの山の良さを忘れかけていました。

現代のロープが出る山は、5級からのスタートです。最低が、5.7.

しかし、ザイテンのような一般ルートで歩きを習熟した人が歩けているのは、3級の岩場です。

じゃ、4級はどこにあるの???

そう、4級ってクラシックのアルパインルートです。いきなり本番。いきなり落ちたら死ぬところ。練習するようなところは、どこにもないんです。鎖場がずっと連続するような岩場が4級でしょうが、そんな岩場はロープが出る山をする人にとっては、簡単すぎて面白くなく、ロープが出ない山をする人にとっては、難しすぎて危ないので本番。いわゆるクラシックルートです。

敢えて言えば、湯河原の悟空スラブでしょうか?歩けるそうです。

そう言う意味で、ロープが出る山をしたい!と思い始めて、実際にロープが出る山に行けるスキルがつくまでは、もどかしい思いをしないといけない時代かもしれません。

なぜなら、4級を飛ばして、5級から上しか、日常的に練習で触れるという場所、ルートがないからです。

一般に日本のアルパインのクラシックと言われるルートは、大体5.9が落ちないで登れれば、登れると言われています。ので、”5.9マスター”というのが課題です。

■ 5級マスターになる

これはどういうことか?と言うと

2点支持を身につけなくてはいけない

と言う意味です。

具体的には、正対&カウンターバランスの使い分けができ、どちらを使ったらいいか見分けられ、ごく普通の5.10bが何度かトライしてギリギリリードできる(レッドポイントできる)くらいのスキルが必要、と言う意味です。

身体能力だけではなく、ルートを見極める目、ルートファインディング力も必要です。

岩の弱点を見るのは、縦走上がりの人にはとても難しく、いわゆる読図で何とかなる部分は非常に小さいです。岩の弱点を突く力です。

現代の登攀は、強点で行われていますので、既存の課題を登っている限り、弱点を突く力は、一般的に言って、つけづらいです。

おそらく、日本では5.2~5.6までの課題に乏しいことが、連続的な登攀スキルアップにマイナスに働いているでしょう…海外では、易しい課題が多く準備され、歩きがどんどんと傾斜がきつくなる → 手が必要になる、という連続性が理解しやすいです。

日本では、足で登る登攀の代表のようなスラブ課題でも、スタートが5.7で、小川山のスラブの5.7は、一般縦走しか知らない人が初見で取り付くには、墜落リスクが多きすぎます。

■ 独学が難しい → ビレイをマスター

というような事情で、日本では、一般登山から、”本格的な”登山へ進むのに、独学は非常に難しい、ということになっています。

”場”が提供されていないから、というのが理由です。小川山では、5.7のスラブが一番易しい課題です。5.7なんていう課題は、昨今の5.12を登る人が普通というようなフリークライミングの世界では、誰の尊敬も得られないようなグレードですが、それでも、初めて岩を触る人にとっては、かなり難しく、ロープを出さないで登ることは、熟達者でもあり得ないです。しかし、一方で、5.7で落ちるようでは、その先はない、というのも真実ですが。

したがって、誰かにロープを張ってもらう、リードしてもらう必要があります。

リードしてもらう必要があるということは、自分はビレイする側になると言うこと。…つまり、ビレイのマスターがこの時期の人が最初に取り組まないといけない事柄になります。

■ ビレイをマスターするには

アルパインへ進もうと決心した人が、第一の優先度で、確実に取り組まならなければならないのは、

ビレイのマスター

です。

この時期から、バリエーションへ進むと決めた人は、週に2~3度人工壁に通い、週末は岩場に行けるときは行く、というような生活スタイルに、もれなく入ることになります。

週に2~3度の人工壁通いは、最低でもビレイをマスターするまでは続けなくてはいけません。

(ちなみに私の大学生の後輩君はこれをしてこなかったので、昨シーズンは一緒には登っていません。教えてもらって、分かっていて、やらないのはダメです)

マスターするまでの期間は、人によりけりでしょうが、一般的には、半年程度はかかると言われています。週2~3日の頻度で、です。

■ お目付け役の必要な時代

それをしないで、もしくはそれをしている途中で、岩場に来てしまった人は、信じられないような、杜撰なビレイをしています。

しかし、誰もが通る段階でもあります。

そのような段階にいる人には、常にお目付け役が必要です。

そのお目付け役がいない…というのが問題になるのが、昨今の山事情。

このような段階にいる間は、多くの人は、ガイド講習に出る、という選択肢を取ります。

 ・ガイド講習に出る

 ・山岳会に連れて行ってもらう

 ・知り合いの経験者にお目付け役で一緒に行ってもらう

山岳会で連れて行ってもらうという選択肢もありますが、会をよく選ばないと、一般的な山岳会が連れて行く岩は、年に1回程度ですので、一か月4週×6か月=24回の岩場経験という経験量を蓄積するのに、24年かかってしまうような山岳会だと入っている意味がなくなります。

ちなみに月1回岩場に行くという会は、昨今ではマシな会と思われますが… それでも
24÷12=2年。それでも、24回の岩場経験量を積むのに、2年かかりますね。

つまり、最短でも半年、2年で運が良い方、成り行き任せなら24年かかるということです。

すなわち、マスターしようという意思がないと道は開けません。

■ 絶対量が必要

要するに、経験量の蓄積が必要ということです。

ちなみに、私の岩場経験は初年度だけで、17回(内7回は自分で連れて行く側)です。

これは、年に一回しか岩をしない会に属した場合の、17年分(笑)。(今では、100回以上の岩場経験があります)

岩にはシーズンがありますので、1シーズン毎週岩、という生活をしばらくはしないといけないかもしれません。

良いことは、ビレイは一旦身に付けば、自転車に乗るのと同じで忘れることがないということです。ですから、ここは山を我慢してでも行く投資価値があります。

■ 登攀力のほうも同時並行で

ビレイは防御の技術ですし、連れて行ってもらうためには払わなくてならない税金です。

しかし、そもそも、自分が登るために行くのですから、登攀力の方も必要になります。

登攀力は…岩場に行けない場合は、現代では、クライミングジムに行く、という選択肢が大体のお決まりコースです。

人工壁では、5.11aが登れることを目指しましょう。

■ まとめ

ということで、まとめ。

一般縦走からバリエーションへ進むには?

・ビレイをマスターする (量的に貯める)

・人工壁で5.11aを目指す

・ロープワーク講習会に出て必要なノットをすべて覚える

の3つが必要です。最後の一つが一番簡単。家で出来ます。コソ錬って呼ばれています(笑)。

一般縦走からアルパインへ進んだ人は、山域の概念が頭に入っており、山独特の気象などのリスク管理もできているため、これだけの投資で済みます。

逆にボルダリングから入った人が、山の自然のリスク管理に習熟するのは、結構大変だと思います。

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