■ 一般的な予想以上に劣化が激しい山岳会・部
ハゲオヤジさんから、こちらの記事にコメントをいただき、大変ありがたく思いました。
記事 遭難しない方法について考える
私的には、
体力がない=自分で思っているほど登れずに予想外に時間がかかり、行程がずれたり幕営地変更やビバーク、撤退を余儀なくされる ということ
がどれだけ役に立ったかしれません。
ハゲオヤジさんがおっしゃるように、昨今の山岳会は、一般の人が思う以上に劣化が激しいのです。質の低下が激しい、ということです。
学習院大学山岳部だけの話ではありません。
■ 不足しているのは体力だけか?
会で行った阿弥陀北稜は、まさに体力不足がゆえに凍傷になった事例ですし、去年の春合宿も幕営地が変更になったのでそうかもしれません。冬合宿は計画段階から実力不足で、うまく行かないだろうことは分かっている感じでした。
別の山では、鎌なぎ山行はどう考えても実力以上の山でした。普通の山をコースタイムで歩けない人を深南部最難の山に連れて行ってしまったのです。
そういうのをしたい人は、経験のない若い人というよりも、むしろ、50代以上で若いときにアルパインの経験があるベテランのようでした。
若い人はどちらかというと、知らないで突っ込むのですが、ベテランはちゃんとヤバいという認識はあって、ただこれくらいの山、というプライドのために突っ込む。
なので、どちらが罪が深いかと言うとベテランのほうではないか?と思われました。
■ 怒りは図星の印
指摘すると、非常に怒る。それは心理学的に言うと、正解、図星、ということを意味するのです。
ということは、この指摘は合っているでしょう(汗)。
例えば、阿弥陀北稜の山行では、私はパートナーと2名で登る予定でしたが、パートナーのほうに不幸が出て、やむなく山行はキャンセルしました。この時は、ホッとしました。
当日は八ヶ岳でも稀にみる寒気の日なのに一升瓶の宴会山行、7名の大所帯、なおかつリーダーは去年、単純な赤岳でも息切れしていたのを知っていたからです。しかも北稜をやる前に、山域全体像や概念を知り、敗退を確実にするための、御小屋尾根や阿弥陀中央稜はやっていませんでした。私が会山行で提案しても却下されていたのです。したがって、阿弥陀北稜はぶっつけ本番で、なおかつ山を舐めたとしか言えない上記のような計画だったのです。
私は怖くなったので、パートナーの都合で行けなくなったときは、心底ほっとしました。これは会の先輩の誰かが、アブナイと思って、行けなくなるように裏から手を回してくれたのでは?と思ったくらいです。会は家庭的な会で、本当に危ないことはさせないようにしてくれるはずだからです。
すると、行ってもいない山行の食当費を払えと言ってきたのです。しかも、高額な食当費です。
山行キャンセルくらいで、怒るのはおかしなことです。行っていない山行の食当費を請求するのも非常におかしい・・・。
しかも、この先輩には、生ガキを差し上げたり、山でパシリをしてあげたり、山で酒もテントも担いであげたり、山小屋のおやじさんにいい顔をさせてあげたり、恩を売ってこそはあれど、世話にはなっていません。
・・・ということはどういうことか?
山行をキャンセルしたくらいで、逆上するようなことはないはずです。つまり、この山行が実力以上だ、という指摘が的を得ていたということ以外、怒るような要因がないのです。
この山行は、悲しきかな、5名中3名の凍傷という結果を持って幕を閉じました。
後日、私は会の前をラッセルしていたガイドパーティの人に岩根で会ってしまうのですが、低温と強風で敗退決定と言う事でした。ガイドパーティは前を歩いていた(しかもほとんどラッセルしてくれた)のですから、それを無視して行ったのです。
もし、私がこの山行に参加していたとしたら、どうなっていたでしょう・・・
遭難時に最初に死ぬのは、リーダーと最も弱い者です。実際この山行でも、リーダー格の人がもっともひどい凍傷となり、30代男性の若手でさえも足指を凍傷にしてしまったそうです。
私がいたら、私が指を失う羽目に陥ったかもしれません。
■ ではどうすればいいのか?
ハゲオヤジさんはこうおっしゃっています。
だったらスポーツジムのクライミングウォールとか冬はせいぜいアイスキャンディー登る活動に留めておけよ。
実際、経験がない若い人の会で、良識がある会は、このようになっていると思います。せいぜいアイスキャンディー。それより上にいくには、本当に、恐る恐るです。
一方、昔取った杵柄派は、クライミングウォールにも行かず、アイスキャンディーにも行かず、日ごろは、歩行時間5時間程度の一般ルートの山しか歩かず、の状態で、バリエーションルートへ、となっていると思います。
特に阿弥陀北稜は入門ルートの位置づけなので、そのような”入門程度の”ルートのために、トレーニングする、という意識にないと思います。
私の山行日数は、年間100日程度です。クライミングに行くのは、アイスか岩か?と言う違いがあっても、ほぼ毎週です。今年のアイスクライミング回数は、2ヶ月で10回を越えました。
日常的に山に触れていると、山を見るというのは普通のことになりますが、昔はこうだったから、と言う判断だと、山を見ては判断できないかもしれません。
山も温暖化で昔とは変わってきていますし、人間の方も、若いときと今では、やってみたら違った感じ、ということもあるかもしれません。
私も久しぶりにバレエをすると、あれ、ちょっと感じが違うなと思うからです。たとえばジャンプの高さが低くなっていると、打ち付ける足の回数を減らさないと突き指してしまうかもしれません。
アイスキャンディーを登るだけでも見えてくることはたくさんあります。アイスキャンディーを2回登っただけで腕がパンプしている人と、10回登っても平気な人では、体力意外になにかしら違いがありそうです。
アイスキャンディーで、ビレイがだらりんビレイであれば、落ちることができない本チャンへビレイヤーで行くのは、まだ時期尚早ということが分かるでしょう。
本当にハゲオヤジさんのセリフが必要なのは、伝統のある会、のほうなのかもしれません。
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