Friday, May 5, 2017

薄い踏み跡とお友達になる会 脊梁山地

■ 新しい友達と

新しい山の友達の単独行の縦走計画に、便乗させてもらって、久しぶりにテント泊縦走に出かけた。

経験が生きる、ということとはどういう意味なのか?今回はそれを理解した山だった。行った山域は、初めての山。

■ 山行前

計画書が送られてきた。稜線をぐるりと回遊。作成者の意図は分かる。ただ最後の下山路は、美しくないというか、既存の道を利用するため、きれいな馬蹄形を描いていなかった。ここは美しく、一つの輪を作れないかな、などと自動的に考えてしまう、悲しい性(笑)。

核心部は?

ヤマレコで、どの程度歩かれているか?を事前チェックすると、踏まれていないのは、最後の下り。美しくないと感じた部分だった。2万5千の地図には記載があるが、道が消失している可能性もあるな、と思う。ただヤマレコユーザーが、古道などというマイナールートを好まないだけかもしれないが…。下山時刻は17時で、核心部が最後にありそうな割には、ゆとりが少なめだと感じた。

計画は大きすぎないか?歩けそうか?

意欲的な計画は好ましい。が、自分の実力以上の計画に同意するわけにもいかない。歩けなかったら、迷惑を掛けてしまうからだ。計画書には、タイムの想定が書かれていなかったので、柔軟な対応が可能な山域なのだろう。初めて一緒に行く人がいる場合は、通常は大きめの計画は立てないからだ。一応、地図上での踏破距離で行くと、長いが歩けない計画のようには思われない。懸念は、最後に特別時間がかかり、ヘッデン下山になるかもしれないという懸念だけだ。

念のため、時間が押してしまったときのために、エスケープに使えそうな尾根には、すべてチェックを入れる。尾根の末端だ。エスケープに使えるかどうか?という判断には、

・傾斜が急すぎないこと、
・末端が崖で終っていないこと、
・ちゃんと近道であること、
・ある程度踏まれていて歩けそうであること

などの条件がある。危険が地図上で予測できるような尾根は基本的に歩かない。たとえば、崩落地や雨裂の記載がある、末端が崖であるなど。ただ崖は結構、突破できる可能性もある。選択肢として使えるか、使えないかは、登り出し前に林道を車で偵察したりする。

単純な縦走なので、

・踏破できる体力
・生活技術
・読図・ルートファインディング技術
・水場
・天候の読み

その程度が課題になりそうだった。この山域の天候はあまり知らないが、土地名から雨が多いことがうかがわれ、予報も雨がちだった。ので、軽量化を優先せずテントとした。水に弱いダウンではなく、化繊の保温着へ。

あまり重さが課題になる山ではなかったため、重量は気にせず、食べものをたくさん持って行った。水容器、ヘッドライトは予備を持った。ヘッデンは下山核心の為、夜間歩行を想定したためだ。ザックは、共同装備の負担を見越して、ゆとりがあるサイズにしておく。誘われた山に、小さいザックで来る人もいるが、共同装備を担ぐ気がない、と宣言しているようで、あまり感心しない。

親睦がメインの為、食当が持てないだろう、つまみなどを持って行った。

■ 実際

行きのアプローチでは、緑がきれいだった。の木と藤の花が印象的だ。

さて、と。取り付きが見あたらない。

同行者が沢のそばの踏み跡をたどるが、最初から危ない。一目見て違うな、と理解できた。これは経験による。

普段、読図が必要な山をたくさん歩いていると、踏み跡にも様々な種類があるのが分かる。古道であれば、荒れていても、元の土台がしっかりしているはずだ。沢の入渓点はしょっちゅう変更になるので、踏み跡が新鮮で、崩れつつあることが前提である場合もあるが…。

そこで、一旦林道に戻り少し探すと、正規の(?)取り付きがあった。小さな蒲鉾板程度の板に消えかかりそうなマジックペンで、雷坂と書いてあった。これでは、よくよく探さないと見つからない。不親切だ。が、そこを見つけるのが、経験値だ、自分で理解できた。山の最初の試験、合格。

さて、と歩みを進める。使われなくなって久しいらしく、倒木で歩きづらい。が、踏み心地はしっかりとしている。ふんわりとはしていない。

尾根に上がるまでは一頑張り、と、承知している者同士。良いペースで上がる。急な尾根だった。同行者の歩みはしっかりとしていて、良く歩いている人なんだなぁと思った。

稜線に出ると、ずっと霧だったが、それくらいでちょうど良い気温だった。古道と古道をつなぐ中間部は、県境を歩く山なので、地図上は境界線ラインがあり、ずっと比較的幅の広い、良く踏まれた踏み跡が見つかる。ありがたく、使わせてもらった。

稜線は美しく、うっとりとするような景色だった。丹沢と奥秩父と南アルプス深南部を思い出した。苔むした森や、ぶなの森をうっとりと歩く。

ところどころで、踏み跡が不鮮明になると、尾根に上がる。と大抵の場合、すでに同じことをした人がいるらしく、そこにテープや踏み跡があった。たいていはピークを巻く、下の方に歩き良い道があったので、省力の為、尾根に登っても、踏み跡を見つけるため、という感じで、眼下に踏み跡を見つける。おかげで良いペースで歩けた。人に踏まれているということは本当に省エネになるのだ。

幕営地に付くまで水場がないので、水は節約モードで行く。最後は峠であるはずだが、稜線越しではない、意味不明のテープを無視して直進したら、崩落だった。降りれるところを探す。同行者が、ここは大丈夫では?というので、見ると、崩れてはいるが、下りれそうだった。念のためというので、ロープを出してくれた。あり難い。短い1、2m程度のお助け紐で一歩だけの核心をロープに体重を預けて降りる。

峠に降りると、ダート道が走っているため、苦労して歩いて来たのに、バイクの人がいた。なんとなく、優越感を感じた(笑)。バイクがなくても来れるってことで。

水場を探しに林道を歩くと先ほど無視したピンクテープの始点が水場だった。なんだ、それで、地形的に合理的でないところにテープがあったのか、と合点する。

石楠花
水場のそばに風の当たらない場所があったので幕営地とし、宴会に取りかかる。なんと同行者は瓶でお酒を担ぎ上げてくれていた!瓶で!美味しいお酒だったので、半分以上、私が飲んでしまったかもしれない。鍋もおいしく、米も生米から、と山岳会仕様でありがたかった。

山の話題で楽しく夜も更け、就寝。随分、霧雨で濡れたので、着干しとする。夏用シュラフでは、もう暑いくらいで、喉が渇き、夜中に一度起きた。

明け方、一雨あり、雨音でうっすら目が覚める。遠くで、何者かが歌を歌っているような歌声が聞こえ、宮崎駿監督の映画の世界を思う。鹿だろうか?音程があった。歌心がある妖怪かもしれない。

少し寝過ごしてしまい、5時起床、朝食をゆっくり食べ、急がず支度したら、7時出発となった。少し遅い出発となってしまったな。

次の目的地までが、あまり踏まれていないと思っていたが、実際は昨日と同じで、境界線を厳密に辿らなくても、いい具合に踏み跡が出ていた。しかし、なかなか到着できない…。あと4kmと書かれた中間地点から、長かった。

踏み跡程度を辿るため、結構アップダウンも出てきた。小ピークが連続する。素晴らしい、美しい場所だが、登りではスピードは出ないなあ。

…これは道が階段状の良くある登山道ではなくて、フリクションで登る力技系だったこともある。意外に時間がかった(汗)。楽なようで楽でない。鼻づまりもするし、しばらく休憩が長いと冷えも感じる。

途中、レンゲツツジ、ろうばい、山アジサイ?など、花が見れた。コバイケイソウの群落が多かった。途中に、赤ちゃんのワラビがいっぱい出ているところは驚きの景色だった。

幕場付近 峠
やっとこさ、という感じで、目標地点に付く。3時間。意外にかかったな、という感想。

山頂はのんびりしていた。やっと日が出て、暑くなりレインウェアをしまい、半そでTシャツに変更する。汗びっしょりだった。その付近から先は、鹿柵が出ていた。

さて、と出発すると、そこから先は整備された木道が出ていた。次の目標地までは、同じ山か?と思うほど楽に到着。

そこでは一般登山者が、のんびり景色を眺めていた。彼らは近所のスキー場から登ってきたのだそうだ。今回、ほぼ初めてといえる展望が開け、霧が晴れる。衣類も乾き始めた。

一般道というのは、ホントにスピードが出るものなのだなぁ。ほんの一瞬の岩場も出ていた。

同行者がボトルホルダーごと、ボトルを落とすが、一般登山者の人が拾って、すれ違いざまに渡してくれた。マジックテープという仕組み









自体が問題があるという結論になり、多少細工する。予備の靴ひもを持っているそうだった。

予想以上の最初の苦戦で、本日の長い行程がまっとうできるかどうか…と考えていたこともあり、さっさと歩く。意外に消化が早い。アップダウンも少なく、快適な水平歩行だったため、予想以上のスピードで、確認すべき通過点を見落としそうなくらいだ(笑)。古道の分岐を2つ通る。


■ 下りの無名尾根

私がヘモグロビン不足であまり登りをやりたくなかったため、同行者に車を駐車した地点にぴたりと降りれる、無名尾根を降りてみることを提案する。

ここはエスケープの一つとして、チェックしていた尾根で、途中まで古道。古道は屈曲してしまうが、尾根越しの、その先には三角点があるピークがあり、三角点がある=踏まれている。さらにその先も顕著な尾根で、すこしだけある急な個所を読図で避ければ、あとは特に難しそうな箇所は見当たらない、平凡な尾根のようだった。尾根の下りは多めにみて3時間、実際2時間半と予想していた。大体、奥秩父のサイズ感だ。だいたい270度の角度で直進すれば、車に降りれる。

同行者も同意してくれ、古道分岐で下りにかかる。

古道だけに、やはり荒れていた。使う人はあまりいなさそうだった。尾根通しではあるが、蛇行して進む。分岐点まできたことはあまり分からず、そのまま尾根通しに進むと、尾根が広くなっているところなど、非常に雰囲気が良い。結構歩いたのち、三角点を見つけ、ほっとするが、村か何かの境らしく、境界線の杭が出ており、読図があっていることを保証してくれる。きっと地元の人は歩いてそうだ。

最後の読図ポイントのピークから、多少判断力が必要で、最後の尾根は完全に歩かれていないかもしれないと思っていた。

…ら、違ったらしく、細い細い番線が出ていた。足を引っ掛けそうで危ないじゃないか。と思う。いったい誰が使っている尾根なのだろう。

一か所急な個所があるので、現場判断で、左側の傾斜の緩いほうに補正する。ちょっとトラバース。こういうところも経験値だ。

機械を優先しようとする人がいると困る。GPSの軌跡は優秀な道具だが、50m程度は普通に誤差がある。

以前、GPSの軌跡をダウンロードしてきて、それ通り歩こうという人がいて参った。その人は、50mの偏差があることを知らないのか、1,2mでもずれると文句を言うのだ。けれど、目の前に急な道と、10m隣に緩やかな道があれば、10m隣の安全な道を通るのが、本来の人間の感性だろう。ところが、機械は正確だ、機械は間違わない、と信じていると、機械とは、人をめくらにし、機械に人を隷属させるもの…。使いこなすのは、あくまで人間の側であるべきだ…。

うまいこと難所を切り抜ける。

ところどころ、岩がちな尾根であることも分かった。

左手の谷地形の部分は、高いところから杉の植林になっていた。植林地には作業用の道があることが多いため、それを探して使うことも選択肢にはあったが、歩けない場所が出るまでは、山の高速道路である尾根を忠実にたどる。尾根終点は大抵急なので、沢地形に逃げることが多い。しかし、この尾根は最後は、蕨畑で、緩やかな傾斜のところだった。壊れた瀬戸物が一杯捨ててあり、ゴミ捨て場のようで残念だった。

その前に駐車していたので、ちょうど車の真後ろに出て、林道歩きを節約できて、爽快。

最後に川で顔を洗い、温泉に立ち寄り、PAでラーメンを食べて帰宅。

楽しい山行だった。

■ まとめ

今回は、黒富士や金峰山、中津森、伝丈沢など、無名の尾根谷を単独で歩いた経験が生きた。

いろいろな種類の踏み跡を見分ける、ということが課題で、その試験には合格したようだ(笑)。

さて、テントを干すとするか。


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