先ほど4日間のテント泊縦走から帰りました。
この縦走は、私にとって、思わぬご褒美のようなもの… 大変美しい経験でした。
≪日程≫
Day1 下山日(遠見尾根 2時間40分) 再入山16時(猿倉から白馬尻小屋 1時間) テント泊
Day2 白馬雪渓 ~ 白馬山荘 ~ 白馬鑓~杓子岳~天狗池(天狗小屋) テント泊
Day3 天狗山荘 ~ 不帰ノ嶮 ~ 唐松岳 ~ 大黒岳 ~ 五竜山荘 テント泊
Day4 五竜山荘 ~ 五竜岳 ~ 八峰キレット(キレット小屋) ~ 唐松岳 ~ 布引山~冷池山荘 テント泊
DAy5 冷池山荘 ~ 爺ヶ岳 ~ 種池山荘 ~ 柏原新道 ~扇沢 バス&電車で白馬へ。
≪行動時間≫
Day1 2:40 + 1:00
Day2 約9時間
Day3 約7時間
Day4 約9時間 核心部
Day5 約5時間 下山日
装備重量: 14~15kg
■ なぜ後立縦走なのか…
正直言って、4日間ものテント泊縦走は、私の山スキルにマッチしているのかどうか…
それは正直よく分からないのでしたが、この縦走をすることは、なんとなく当然のように感じられました。
この”行くんだから行くんだよね~”というような感覚は、雪山の2年目でツルネ東稜に連れて行ってもらった時や、夏の終わりに山切れになり、ソロで北岳の縦走に出かけた時、初ソロテント泊の八ヶ岳、と同じような感覚で、この山は”与えられた感”が強いものでした。
後立山連峰…後立の中では、もっとも難路にあたる、白馬雪渓から、白馬鑓、杓子、唐松、五竜、鹿島槍、さらに爺ヶ岳までの縦走です。途中には、岩場の難所で知られる不帰の嶮が天狗池(天狗山荘)と唐松岳の間にあり、さらに最大の核心部である、岩峰のキレット、八峰キレットが五竜岳と鹿島槍の間にあります。
私は登山は好きなのですが、特に岩稜帯が好き、と登山にスリルを求めるタイプではまったくなく、高いところ、怖いところ、危険なところは、どちらかというとこれまで避ける傾向にありました。
妻の趣味登山に付き合っているだけの夫のほうがむしろ、奥穂高だったり、西穂などを提案し、たとえば八ヶ岳でも赤岳に登りたい、と最初に言い出したのは夫の側でした。
ただ、夫のそうした要望は単純なミーハーなだけだったようです。
彼は、実際に岩峰や高度のある山に慣れる努力をすることはなく、登山に対する理解が深まるにつれ、むしろ、難易度の低い山を提案するように変って行きました。つまり、認識の浅さを理解したのですね(^^;)
実際、易しい山である、ゴールデンウィークの仙丈ヶ岳でさえ、遠慮気味で、判断が保守化した結果、北沢峠からの甲斐駒にさえ登らなかったのでした…。
もしかして、登山の初心者の心理というのは、要するに夫のように、
有名な山に登りたい ⇒ 山を知れば知るほど自分の力を知り、易しい山に…
ということになるのかもしれません。
逆に登山に対する努力の量では、もっぱら登山にハマり中の妻の私のほうがむしろ、傾ける労力の大きさとして大きいという結果、オールマイティーな登山のスキルを磨くことになり、登山スキルの一つとして、ボルダリングジムやロープワークが含まれる・・・ため・・・、さらに山行回数が夫よりも多い・・・と、これらの重なりの結果、歩くための体力&技術を夫と比較するとすれば、何の努力もない夫より、当然のことながら、上となってしまったようでした。
要するに
山にハマっている度合い=山スキル度、
だったのですね…。
そういうわけで、岩場というのは、私自身の、自らの志向、というわけではない。にもかかわらず、訪れた、高い難易度のルート、それが後立縦走でした。
■ テント泊へのこだわり
今回実は、私は小屋泊もできました。アルバイトの関係で系列の山小屋には宿泊が無料になるのです。
ほぼ空荷で歩ける難ルート・・・そこをあえて、テント泊にしたのは…
山小屋の存在価値を否定したいのではなく、”寝食一式を背負って歩いて、初めて自立した登山者である”という、昔ながらの登山の仁義を、私なりに徹底したいからでした。
というのは、これまで、実力以上の登山をしてはいけない、という気持ちから、出力70%。自分が出来ると感じる力の7割程度で、登山計画を組み立ててきたからです。
体力的に歩けるとわかっている範囲の6~7割で歩く。あるいは体力にゆとりを持たせるために、ザックを軽くするために、小屋を利用する、などです。金で買える安全は買え、ということで、積極的に小屋に頼る面もありました。もちろん、ほぼ夏山ではなく、冬山がメインですが…。
夫と出かけるときは、さらに登山の難易度を下げる。
自分で出かけるときは、恐る恐るながらも、少し難易度を上げてみる…
チャレンジするときは、先輩や講習会が用意してくれる安全の傘の下で…という具合でした。
ただそうした、安全を名目にした小屋利用の山旅が安全対策ではなく、単なる怠慢に陥りつつあることは…去年の11月に行った、初冬の燕岳で強く感じたことでした。 自分には嘘はつけません(笑)
こちらは当方の山歴の目次。
下駄を履かせてもらっている感…とでも言いましょうか。子供が補助車なしで自転車に乗れるのに、いつまでも補助車に頼っている、そんな状況です。
先輩や講習会が提供してくれる安全の傘の下で試したことを実際に実行に移す頃合いが来ていたのです…
そうはいっても、ソロで4日間のテント泊縦走(つまり重い…汗)で、さらに岩峰の難路が含まれる山(つまり技術が必要)…となると、体力が持つのか?技術的なスキルが十分なのか?それは自分自身にも分かりようがない…。
山歴としては3年しかなく、さらに夏山としてみると、2シーズン目に過ぎない私がやっていいものかどうか?という合理的、常識的な問いも脳裏から離れませんよね。
こうした状況を総合的に判断、となると、正解は、いざとなれば無料で小屋を頼ることができる状況下で、あえてテント泊ということが、安全対策済みのチャレンジ山行として正しいように思えるのでした…
そして、縦走することに対しては体力的な不安は一切なかったのです。あるのは技術的不安でした。
体力的な不安がなかった理由の一つには、縦走してきたお客さんたちをたくさん見てきたせいもあるかもしれません。
「私がソロで八峰に行ったら心配?」と山に詳しいバイト仲間に聞いてみましたが、彼の答えは、「正直、○○さんでも行っているんだからねぇ…」というもの…
私は、一か八かの登山はやらない主義なので自信がないことはやらないのですが、今回の難度の縦走は、主観的な自信の上でも、客観的な判断の上でも、問題がなさそうなのでした。
私の中で、14時間の長丁場の金峰山~甲武信の縦走や、岩場の連続である北岳八本歯のコルを大急ぎで降りた経験、金峰山黒平ルートでの岩場での確保体験や残雪期のテント泊などが複合的に静かな自信につながったのに違いありません。
■ 「お山が私を受け入れてくれているか?」
実際に歩いてみて、私はこの縦走をするためにこの山に来たんだなぁ…としみじみと思いました。
夏のアルバイトしかり、集中的なボルジム通いしかり…。体力も技術もちょうど良く準備されていました。
山に登る前には、いつも「お山が私を受け入れてくれているか?」と問います。
お山がノーという時は、大抵それが分かるものです。
大きな不安だったり、ワクワク感がないことだったり、ただ苦痛だったり…。あるいはお天気が最悪で(たとえば雷とか)、どう見ても山が人を遠ざけている…などなど。
思い込みも一部あると思いますが、それでも、自分と山の対話、という感性が登山には必要ではないか?と思うのです。
そうした”対話する視点”がないと、たとえば雷の下で登山に出かけたりと…リスクをリスクとみなせなくなります。
リスク(危険)に対して、最も危険なのは危険をリスクであると認知しないことです。つまり対策ゼロってことですね。
そのことを逆に言えば、リスク無視=自分の意志や都合を優先している、ということです。
たとえば、無免許運転でも事故を起こさず運転できることはあります。が、だからと言ってもう、運転できる、ということにはならない。
その理論は分かるのに、雷雨の中歩いて、自分に雷が落ちなかった、ということで、雷雨の中を歩けた、という誤解を人はしてしまいます。誤解だけならまだしも、「怖かった」自慢話に陥る…
つまり、謙虚さを失います。だから登山においては、お山というものをある種、畏れるべきなのです。
そういう感性で判断すると、引き帰すべき時に引き帰せるように思います。
■ YES!
今回は行ってみて、YESという答えを一杯もらったのでした。大きな自信につながった山旅。
これまで努力してきた、すべてのことが結集されたようなテント泊縦走でした☆
詳細はまた明日、続きを書くことにします。
≪追記≫
初のテント泊縦走4泊五日 後立山 白馬雪渓~爺ヶ岳(柏原新道)
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_29.html
その① 崩落の白馬大雪渓
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_30.html
その② 稜線散歩&天狗山荘
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_1279.html
その③ 不帰ノ嶮 ~ 唐松岳 ~ 五竜山荘
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_4942.html
その④ 核心部 八峰キレット および下山日
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/09/blog-post.html
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