Friday, August 30, 2013

後立山テント泊縦走 その③ 不帰ノ嶮 ~ 唐松岳 ~ 五竜山荘

■ 時間が立てば価値が失われるもの・・・

今日は、あっという間に時間がすぎました。夫は帰りが遅いそうなので、天然酵母パンにきゅうりをはさんだだけの、キューカンバーサンドとワイン、ゆでトウモロコシで軽めの夕食です。

定番化しつつある大豆ミートのから揚げもどきも作ってみました。オールベジタリアン。


飽食の現代・・・昔は肉がぜいたく品でしたが、冷凍技術の発達した今、冷凍できない野菜がぜいたく品の地位を奪ったのではないか?

と言うのは、時間がたてば価値を失うということが最も価値の高い食なのではないか?と思うのです。 困ったときは冷凍食品、というなら、その対極が鮮度に影響される種類のものかも・・・???

今回の山旅で一番贅沢なお土産は、扇沢で汲んだおいしいお水だと思いました。

何しろ塩素の入っていない水は貴重です。”自宅で名水コーヒーを”は、山に行かないとできないことです。

アトピーは塩素をシャワーから抜くとすぐ良くなりますよね・・・

■ 山ではカッコよく

夕方の夕飯の買い物がてら、なじみの山道具屋ストローハットに遊びに行きました。

夏物セール中で、自分へのご褒美にホグロフスのベストを買ってしまいました・・・(^^) 30%オフ…前から欲しかったので・・・ベストは家で家事をするときに腕まくりしなくて良いので、重宝します。 

今回の山行で、一つ気が付いたのは、山ではかっこよくあるべし!ということです。

ただ何をカッコいい!と思うかという価値観は、世代間で大きく違うと思います。

昔ながらの山屋さんは見ただけで分かります。装備が質素なのです。ワークマン活用かな?

最近山を始めた人ほど、装備は過剰気味な傾向がある。 これは年齢問わずです。定年してから山を始めた人は、年齢が父ほどでも装備が若者と同じです。マムートやマーモットを着ている人をよく見かけます。

モンベル、ノースの方がまだ歴史があるブランド。マムートは今はガイド寄りのブランドですが・・・マーモットはデパートで買えるブランドなんですよね・・・デパートで買う時代の人なんだなぁ・・・とか考えてしまいます。服をデパートで買うこと自体が、私には遠~い時代のことで、高島屋や梅田阪急デパートの包装紙をありがたがった祖母のことを思い出します。

選択肢の多い時代の人間は、何を選ぶかよりも、何を選ばないか?で、価値観が表現されるのかもしれません。 

何しろモノ余り時代・・・取捨選択の視野が必要で、それは、モノがありさえすればよい、という時代より、むしろ難しいスキルかもしれません。選ぶ技術や捨てる技術が必要。

それは登山靴にしても、ウエアにしても、ギアにしても・・・です。

モノを吟味する目が必要になりますから・・・何を選んだか?よりも、何を選ばなかったか?で、価値観が現れる時代、持たない生き方が輝く時代、と思います。

そんな世相ですので、最もかっこ悪いのは、雑誌などに踊らされていると一見して分かること、かもしれません。

何しろ、取捨選択の主導権を雑誌に明け渡している、というわけですから・・・。たぶん、雑誌の追従は不安の裏返しなんだろうな・・・。

■ Day3 雷雨で迎えた朝

縦走3日目の朝は、残念なことに、で目を覚まさせられました。

3時45分ごろに雷の光で目覚め… 飛び起きて、大急ぎでパッキング…テントとグランドシート以外のすべてをとりあえず、ザックに詰め込み、自炊場に避難です。

パッキング、やれば15分でOKってことを証明(笑)?

カミナリ…、これだけは対策というのはないもののようです。逃げるしかない。

例え逃げたとしても、小屋の近くでも落ちるピークはあるらしいですし、私がよくソフトバンクの電波を拾いに出かけた白岳は、小屋からたったの10分でしたが、赤茶けた石の箇所は雷が落ちた痕跡だと教えられ、震え上がったのでした…

テント内も安全とはいえない。というかテントに隠れて周囲の状況が分からないのがイヤなので、窓ガラスから、外がうかがえる小屋の自炊場で、朝食をとることにして、とりあえずテントを離れました。

出てみると、おじさんが先に一人だけ自炊場に来ていました。4時に朝食の約束をしたのだそうでした。

「けど、みんな起きてこないんだよね…」とおじさん。

「カミナリの経過はどんな感じですか?」と聞くと、「うん、ここに来てからはだんだん遠くなっているような気がするね」

ということで、傾向としては回復傾向にあるようで、一安心です。

天気の予報は、ヤマテン(有料、月300円)から次のような情報を得ていました。携帯電話のメールですが、今回は稜線に出たところで時々電波が拾えました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーヤマテンより引用
≪24日4時時点の26日の予報≫

26日:日本海の秋の高気圧に覆われて爽やかに晴れるが、朝の冷え込みは厳しくなる。防寒対策は万全に。午後は上層の雲が広がっていく見込み。

≪25日4時時点の26日の予報≫

26日:日本海の高気圧に覆われるが、夜に500hpaで-9℃以下の寒気を伴う上空の気圧の谷が接近してくる見込み。このため、夜は大気がやや不安定に。午前は稜線では概ね晴れるが、朝日岳など後立山連峰北部では低い雲が広がりやすく、北風がやや強まる時間も。午後は次第に雲が広がり霧が広がりやすくなっていく。風は特に強まらないが、夜は積乱雲の発達に念のため注意。 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

このような情報を得ていたため、二日目のシュラフにもぐりこむ時点で、持っている衣類を全部着て、
非常用に持ち歩いているカイロを腰に張って寝たので、温かく、この日の夜は熟睡でした(^^v)

衣類を全部着るのは、冬山で教わった技術(?)です。さらに寒ければ、ザックに足を入れてしまう。
今回は夏山で、そこまでする必要はないようでした。それに寝酒で寝てしまえば、寒さに気が付かない(?)です。

天気予報によると、”夜に積乱雲”…これが、夜が明け方にずれ込んだ格好のようでした。後立では天気予報は悪いほうによくぶれます。

ので、明け方の雨は通り雨であろう、と推測し、この日は行動は継続することにしました。

実際も4時半くらいまではかなり雨が降りましたが、段々と止み、雨がすっかり上がってからテントを畳に行きました。

出発は遅らせられるギリギリまで遅らせ、5時半に出発。

出発を遅らせたのは正解で、素晴らしい好天に恵まれ、ベストコンディションの中で、不帰ノ嶮を通過することになりました。

翌日五竜のテント場では、この日の雷で停滞にした人にも会いました。ので、これは情報力の勝利のようです。

でも、本来はラジオから天気図でもかければベストなのかも?でも停滞にしたおじさんは、ラジオもっていましたっけ・・・ やはりヤマテンの猪熊予報士の予報力はすごいのかも???

とりあえず、今持てる知識とスキルではベストの、行動するOrしないの判断であったと思います。

登山は、状況判断の優劣で、心の充実度が変わるゲーム。こうした判断が的確な結果を出すと、本当に気分が良く、充実感を感じるものです。お山の神様が努力に報いてくれた感じですね。



素晴らしいご来光

晴れました~!



2411あたりで装備を岩場向きに調整



■ 核心 不帰ノ嶮

不帰ノ嶮… かえらず、というくらいですから、帰ることができないくらい、難しいところということですよね。

私は安全対策に、簡易ハーネス用のスリングとビナを用意して行きましたが、一回出番があっただけで、結局は使う必要がありませんでした。

この不帰を通るころには、同行者の人たちができて、一人ではなく、3人で登りました。

きっと女性の私を心配してくれたのでしょう…人の温かさを感じるのも登山の一つの面ですよね。

この日のMYテーマは、「決して急がぬこと」でした。急ぐと、注意力散漫になるからです。

不帰の第一峰、第二峰、第三峰、と順調に進み、特に危険や恐怖を感じることもなく、スタンスやホールドも豊富で、鎖は掴んで登りましたが、念のためでした。

ザックが大きく重いので、体が降られやしないか?と懸念していましたが、前日の葱平がちょうど良いウォームアップだったようで、突き指もそんなに意識せず、グリップも良く効き、楽しく核心部を超えました。

通過しながら、集中的にボルジムに行って覚えた、ダイアゴナルや正対、スメアリングやマントリングという技はこの日の、この岩場のためにあったんだな~と納得しました。

神様が私をこの山に準備してくれるとすれば、ギリギリ十分な準備だったのかもしれない。ジム通いをしていないと、不帰はもっと怖い場所だったと思います。

岩場では、じと~とした体の使い方をします。あまり軽快に動く感じではなく、じわ~と体重移動します。

これは万が一、体が降られすぎて落ちるのを避けるためで、ウッカリ、なんてことがないようにです。

なので、ホールド(手でつかむところ)は、引っ張るのではなく、むしろ押す感じですし、足(スタンス)にしてもそうです。しっかり押し付けてフリクションを効かせる。プルではなく、プッシュです。

もっともよく使うテクは、マントリングとスメアリングだと思いました。後は体重を移動するときに、振りの感覚があると少し楽できます。

鎖場の鎖というものは、必ず握らなければならないものではなく、ホールドが分からない人のためにあるのかもしれない…と思いました。

ただ不帰は今出てきたような用語が全くちんぷんかんぷんの人にはおススメできない場所です。その他、高所恐怖症の人にも怖いだけで楽しいことはないと思います。

唐松岳山頂着は10:30.標準コースタイムは、5時間15分ですから、5時間のコースタイムはちょうど同じくらい。ザックの重さがあまり影響していないのに自信を深めます。と言っても標準。 

唐松岳では知人に偶然出会い、うれしい再会でした。高山植物の研究や著書で著名な方でした。

イワツメクサはコマクサを駆逐している植物なので、イワツメクサを見るたび、これがコマクサだったら、と考えてしまいます。コマクサは盗掘被害に遭って数を減らした高山植物です。

この日の不帰では、朝日のブロッケン、虹の環が3重になっているのを見ました。



ブロッケンです


奥に剣



ココで自己確保しましたが、結局確保した方が手間取ってやりづらかった






1峰、2峰、3峰かな?



















こんな道の方がザレて歩きづらいような???




唐松岳山頂 10:30


雷鳥を撮影中!

■ 唐松岳~五竜岳

唐松岳山頂10時半で、ゆっくり唐松山荘へ下ります。途中は砂浴びする雷鳥にも出会いました。

唐松山荘で、これまで苦楽(?)を共にした仲間たちともお別れです。 非常に楽しい仲間たちで、私の縦走のとても楽しい思い出の一コマとなりました。

ホワイトガソリン、上手くいかなくて残念でしたが、不便さを愉しむ発想がステキな3人組(ご夫婦と高校時代の先生)と、渋いウエアがかっこいい男性、グリベルヘルメットで準備万端の男性、それから私、の6人パーティ、って感じでした。

私だけが下山ではなく五竜山荘泊なので、縦走継続です。

唐松岳山荘は巨大な小屋で、テン場はかなり下のほうです。ランチを食べても良かったのですが、休憩料300円をランチ代と別に払うのが癪に障り、小屋の人の対応も、ガスって薄寒い屋外なのに、小屋の外で食べるならタダですよ、などと、ガラガラの食堂を前に登山者を追い払うかのような対応だったので、トイレにさえ行かず、行動継続です。トイレだって200円だし・・・

私は払うのが嫌なのではなくて、バイオトイレなどちゃんとした理由があれば払うのですが、ガラガラの食堂で休憩料なんて、どうも唐松山荘は好きになれません。

≪唐松山荘≫
・ケーキセット 900円
・トイレ 200円
・休憩料 300円
・つまり、室内でケーキセットを食べるだけで1400円!!

唐松山荘前ではガス
 ■ 牛首?

唐松山荘からは、さっそく牛首の鎖場です。7月初旬の雪がまだ残るころに来た時は、鎖は使わないで下ったのですが、こんなに難しかったけなぁ…という感じで、今回は鎖もところどころ使いつつ、降りました。

7月は雨と強い風の中だったのに…あの時は、特に鎖にニーズを感じなかった。

今回は、なんとなく、鎖が心強く思えました。が、もちろん体重を預けるようなことはしませんでした。単純に覚えているより、難易度が高いと感じたのです。人の記憶なんて曖昧なものですね。

牛首の岩場について
http://blog.goo.ne.jp/bongo-pete/c/5dd8e543e8ac99b531ce3cab8e0d08d3

牛首を超えてからは、樹林帯あり、の単純な登山道ですので、前にも来たことのある道だし、2時間半のコースタイムを30分早着の2時間で歩き、13時五竜山荘着です。

実は、軽食タイムが14時までなので、それまでに到着したかったんですよね… 唐松でランチをパスしたので・・・首尾よく間にあったので、チャーハンセット(700円)で、すきっ腹を満たしました。お腹はペコペコでした。

小屋についてみると、意外にも小屋は混んでおり、久々の100人近い宿泊で、既にバイトを上がって縦走を愉しんでいる身分が、バイト仲間に申し訳ない感じでした。こんな忙しいときに来てゴメン的な。

牛首の鎖場



動物を監視するカメラがあちこちに

ナナカマドがもう色づき中・・・秋です


エビフライがポイっと足元に投げ捨てられてビックリ!




五竜山荘前の雪渓の雪もずいぶん減りました
 ■ 風が強い

五竜山荘は白岳と五竜岳のコルに建つ小屋なので、常時風が強いです。それは日々の散歩で知っていましたが…テント泊してみて、改めて、風の強さを再認識させられました。

テント場も、風上側(黒部側)にあるんですよね…だから風を避けられる場所は一切ないです。

風が強いと設営も、畳むのも大変です。 去年の夏山で、暴風雨の中、夫と裏から北岳に出かけ、暴風雨の中でテント泊デビューしたことを思い出します… テント泊デビュー、アレはこのためにあったのかしら?

その上、風が強いテン場は、テントが煽られて、ウルサイ…
テント内も風で揺れます・・・

今回、この経験でシングルウォールのソロテントが欲しくなりました。

あの風だとツエルトを設営するのには、なんらかの工夫や技が必要な気がしますし、自立するテントのほうが設営が楽ですが、ダブルウォールだとフライシートを張るまで、ペグダウンできないので、テント内に重しになるものを入れて設営する必要があります。一人だと結構大変。

今回、私は本体を張るときは、中に石を入れ、本体が立ち上がってからは、ザックを入れ、フライシートを張る時も風下から順に、と工夫しました。

また、五竜のテント場は平らな面が少ないです。私は脚が下になるように横になる作戦で、結局テント内では、対角線に寝ました。頭が上でないと頭に血が上がってしまいますよね。

テント内のモノの配置は、みんなマイ定番を持っていると思いますが、6月の七倉沢で雨水の流路にツエルトを張った経験によると…やっぱり水関係は下が良いようです。万が一、漏れても被害が小さいので…

結局、モノの配置は、頭に使うものや、乾いたものは上に、足元で使うものや濡れてもよいもの、水などは下に、の原則が良いのではないかと思いました。

テント内でガスストーブを使うのはタブー視されていますが、風が強い中では、致し方あるまい、という感じです。どうせ冬山ではテント内で煮炊きですしね。 テントの中にも風は入ってくるのですが、いくぶん調理しやすくあります。こんな状況だと自炊場が使えればホントに助かるのですが。

とはいっても私はまかないをいただいたので、調理は朝だけで済みました。

≪五竜山荘≫
・テント泊 500円
・水 有料 100円/ℓ
・お湯 有料 150円/リットル、100円/500mℓ
・お茶 有料 200円/ℓ
・トイレ有料 100円
・携帯電話 ソフトバンク、Auは白岳、またはG0、山頂などの長野側に開けたところで入る
・充電 iPhone以外 100円
・テント場は風が常に強く、平らなところはほぼない。
・テン泊者の自炊場利用は不可。
・軽食 チャーハン、ピラフ700円、スープ付、またはきつねうどん
・夕食はテント泊でもカレーが食べれる 1700円 お変わり自由なためおススメ
・特筆すべきは、大雪渓純米 800円!
・さらにポンジュース400円!
・アーモンドチョコ250円は山麓の小屋より安かったりする
・夕陽を見るなら小屋前で。
・朝日を見るなら白岳かGゼロがおススメ。ともに徒歩10分。小屋前からは崖が邪魔でご来光観察には不向き。
・白岳からは鹿島槍、唐松岳、五竜岳の三座が見える。小屋前からは鹿島槍、唐松は見えません。









≪追記≫
初のテント泊縦走4泊五日 後立山 白馬雪渓~爺ヶ岳(柏原新道)
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_29.html

その① 崩落の白馬大雪渓
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_30.html

その② 稜線散歩&天狗山荘
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_1279.html

その③ 不帰ノ嶮 ~ 唐松岳 ~ 五竜山荘
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_4942.html


その④ 核心部 八峰キレット および下山日
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/09/blog-post.html