Wednesday, September 19, 2012

岩崎元朗さんのコラムを読んで。ツーリスト、ハイカー、アルピニスト

岩崎元朗さんのアピールをあるサイトで発見しました。コレ。 リンク切れを訂正しました。

僕らの時代、そして今 http://www.tozanken-tomonokai.com/VOL26_01-04_m-iwasaki_bokuranojidai_0.pdf

岩崎さんは中高年登山の旗振り役のような気がして、私はこの方の本で登山の基本的なことを読んだ以外は、私自身は中年にちょっと差し掛かったぐらいなので、山行の参考にするにはちょっと早いかなと感じていました。

中高年向きのコースは、例えると、時速30km走行。

例えるなら、昔から山をやっている山屋さんやガイドさんは、やる気になれば時速300km出る車みたいな感じ。最初からエンジンの質が違う。あっちはディーゼルエンジンで、一般登山者はごく普通のロータリーエンジン、みたいな感じです。

さしづめ、私たち夫婦は、40代、転勤で越してきたから、という理由で山に行っている。つまり、ごく普通の1500cc排気の普通車です。

この岩崎さんは、やっぱりもともと時速300kmディーゼルエンジンの人で、山というときの山の質がそもそも違う…その質の差をどう表していいものか?と考えていましたが… このコラムで紹介されていました。

ツーリスト・ハイカー・アルピニスト。

日本の山には、ツーリスト、ハイカー、アルピニスト の3者がごちゃまぜです。

例えば、先日の前穂に当てはめると

 ツーリスト=上高地散策の人、岳沢小屋まで歩く人、小梨平や徳沢にテントを張って過ごすだけの人

 ハイカー=山頂までピストンで行く人

 アルピニスト=縦走登山、クライミングの人

この3者は海外ではまったく違う人種になり、行き交うことがない。日本ではこの3者が別のストリームだと認識されずに、一つの流れと認識されてしまう。

そこで、安全認識や、主体性の問題など、さまざまなえ?知らないの?などの軋轢がでてきてしまうわけなんですね。認識違いが。

先日、上高地でバスを待っているときに行列の人々を見て思いましたが、山の服の人は全体の1割もいない感じでした…

カジュアルファッションのツーリスト90%、ザック&登山靴のハイカー8%、ヘルメット&ロープのアルピニスト2%って感じです。



■ ファッション先行の山ブーム?

山用品のメーカーも、本格山使用のウエアを作る同じデザインで価格を下げて、ツーリスト用の廉価版を作る。だから見た目にはウエアは似たように見えてきます。
シビアでない山なら問題ないけど、メーカーのカタログを見ると、松竹梅って感じにランクを下げて作っていて、仕様の差で価格差を正当化している。

こういうメーカー側の事情もあって、安いアウトドアウエアもたくさん出ています。その行き先は…ツーリストです。 

上高地でバスを待つその群衆の群れを観察すると… 私はファッション観察好きなので…面白いです。

前に並んでいたカップルは…女の子は、CW-Xのタイツにショーツ、Tシャツ、リュックサック、ハットで登山者かと思いきや、足元はスニーカー。同行者の男性は、ジーンズにシャツ、ウール素材のオシャレ用リュックサックに一般のシューズ。なんだ、ツーリストですね。

あるいは、コットンのサロペットにタンクトップ、大き目の麦藁帽子、そして足元はKeenのピレネー…なるほど、Keenはおしゃれな野外ウエアとして認識されているわけですね。

ほとんどの人がこんな感じで、登山でも使うような山ウエア類は、ファッションの一部に取り入れているだけで、肝心の足元を見ると、ごく一般的なブランドのスニーカーが多数。

登山用品は高いので、一つづつしか庶民は揃えられない。結構、ファッションでハイカーとツーリストを見分けるのはコツがいります。 足元はハイカーは最初から登山靴以外はありえませんから、足元で見るのがコツと言えばコツです。

全体に、アウトドアファッションが流行しているのは…機能性がどうこう、というよりも 上高地まで来ないと、単なるリラックスカジュアルウエアの出番がないからでは…? 

フツーに都会で生活していては、オシャレなカジュアルウエアの出番がないんですよね。そういうのをここぞと着る場=自然の中。日本社会がもう少し、見た目で人を判断しない社会になれば、山で着なくても日常でそういう服を着たい人は一杯いそうです。

■ ステキに見えないんです…(汗)

正直、山ガールファッションは、カラーが多色展開すぎて、私の色彩感覚でいうと、ぜんぜんステキに見えません。オシャレなようにも見えません(汗)

統一感がないので、山でなくても、無料で衣装提供されても、着たくない…んです(><)

かといって、一体何色なんだか?というモ○ベルカラーはとてもダサい…灰色…なので、困っちゃうんですよね。着てもいいような服が無くて… 仕方ないのでパタゴニアを着ているのですが。

別に機能性だけならワークマンでいいのですが、私は開発部で作業着を着て仕事をしていたので着慣れているっちゃあ、着慣れているけど… なんで山でガテン系…? 別に必要もない。

と消去法で行くと、着る服はあまり残らないのです。お金を出してまでダサい服は買いたくないし。オシャレとされている服は私の価値観ではオシャレではないし。

山の服ってそもそも何着もいるようなものではないので、一旦揃えてしまえば特に新たな購入の必要はなくなり、けっこう着たきりすずめで現在に至ります。

もう諦めていて山ではオシャレでなくてもいいという訳です。不断も別に特別オシャレではありませんが。(というか山梨では車移動ですし、人にそもそも会いませんから、服でステートメントなんて発しなくて良いのです…。一方都会ではファッションは最低限人を不快にさせないためコミュニケーションの一つとして重要です)

■ 初心者のために降りてくること 

岩崎さんのすごさは、時速300kmの人でありながら、30kmクラスの人のために降りてきていることだと思います。いうなれば、アルピニストでありながら、ツーリストをハイカーに育てようとしているのです。

無名山塾をはじめ、山の初心者の啓蒙活動に忙しい。やっぱり、上高地でツーリストとしているような人たちが、ちょっと上に行ってみようか、といって山に来るのが日本の現実なんですよね。

今回も岳沢小屋まで上がってきている人は多かったです。山の中腹のキャンプ地と
思ったらいいですね。(なんで山ではテン場といい、下界ではキャンプというのでしょう…?)

今の山ブームの主流になっている?亜流になっている?と、端的に指摘されているような「山ガール」系の人たちは、基本的に、体力がある山のツーリストです。

体力が衰えつつある中高年が主体だった山の世界では体力がある人たちの参入になります。体力がなければ行ける山は限られ、ただ散策するだけの時速30kmの山です。

しかし、山ガール系の若いツーリストは、体力そのものはあるので、もう少し歩けます。するとうっかり実力以上の山域に行ってしまうリスクがあります。

つまり昔の山岳会の新人が体力はあるから西穂から奥穂のコースを企画して、途中で頓挫、新人を1人でエスケープルートで降ろす、みたいなことですね。
こちらに興味深い反省文があります。ステップアップを経ず、いきなり最初からアルピニストコースに入り、挫折し、地図も持たず、水も持たず、付き添いもなく、難路をエスケープルートに使って下山して自力下山しきれず救助される…。これは中高年登山では起こらないけれど、体力があり山の知識がない場合に起こりうる。

こういうリスクが若い人が山に参入する場合にはあります。今は昔のように山岳会で山の知識をハンドダウンしていく仕組みは壊れてしまっているので、山の知識を共有する場は、極端に少なくなっています、まるで高山植物がほとんど見られなくなった高山のように…

一方、日本では、若いツーリストがハイカーに変身中…。

そこはアルピニストの人たちがツーリストをハイカーに育てていかないと誰も育てる人がいません。 ハイカーの中からアルピニストが生まれないとも限りませんし。

入り口は、みんなツーリスト。なぜなら 

 ツーリスト>ハイカー>アルピニスト 

という含まれる関係性だから…アルピニストはハイカーの立場を理解できても、ハイカーはアルピニストの視点には立てません。ハイカーはツーリストでもあるけれど、決してアルピニストではない。

そして、たぶん、アウトドアメーカーや山雑誌、あるいは観光業界が、商機とばかりギラギラした目でにらんでいるのは、9割を占めるアウトドアカジュアルファッションのツーリストの山なのです…

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