Tuesday, February 5, 2019

ネイリングの習得 いきなりヨセミテ?!


これは大人の山岳部からのQ&Aです。この中では

実際のことろ、現在、国内では、ネイリングを駆使するルートは限られています

とあります。要するにハーケンを打つルートということです。

実際、私の先輩でアルパイン歴が10年ほどの人がいますが、ハーケンを打つことは沢ではあっても、岩ではほとんどないとのことです。私自身もハーケンは沢には持っていきますが、岩には持っていったことがありません。

私自身も、これまで行ったルートでは、ほぼほぼボルトが整備され(落ちれないボルトだとしても)、それは、基本的にフリーで登り、落ちない力をつけてから行きます。つまり…行こうとするルートの2段階上のグレードが目安です…例としては、5.7のルートに行くなら、5.9が登れる…をつけてからしか行かないです。

ので、ボルトの存在意義が限りなく低いために問題になっていません。要するに落ちる人はいないという意味です。

現代のクライマーの登り方です。

■ いただいたコメント

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ヨセミテでいきなり練習?

シングルピッチのフリークライミングを十分していない人が、例えば瑞牆のマルチピッチでフリーの練習をしますかね。

国内でピトン打ちをしないで、いきなりヨセミテのビックウォールでネイリングなんかしたら大迷惑です。

初級ルートでネイリングなんかするところがあるんですかね。クラックをトップロープで登っただけでは、カムをセットし、それが墜落に耐えられるかわからないのと同じです。

エイド経験者と同行しても、たいしたことはわからないです。

ピトンは自分で打って荷重して効きを感覚として覚えるものです。

トップロープでクラックを登っても、カムのセットや墜落したら大丈夫かは分からないのと同じです。

この回答者は自分でろくにハーケンを打ったことないでしょう。

GWの奥穂にスニーカーにアイゼンを付ければ登れますくらい、いい加減です。
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全くその通りだと思います。ネイリング=ハーケンを打つこと、は、やり始めて2~3か月かかるスキルのようです。

こちらに別のベテランの意見がありますので、ご参考にしてください。

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 随時、ルートの状態でハーケン打ちやボルト打ちも適当にします。

ランニングビレイやアンカー作りは野北や日向神が一番良いと思いますよ。

毎週通えば、2〜3ヶ月で不安を払拭できると思います〜。
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2,3か月というと土日で、8回から12回。それくらいの練習が必要ということで、現代のフリークライマーだと、野北なんて、フリーで楽勝で登れてしまうので、ただ退屈してしまうかもしれません。こんなに通う気になれないかも。

■ リムーバブルプロテクション

ハーケンはエイド用です。つまり、静荷重には耐えられますが、衝撃荷重がかかる墜落に耐えれるか?は打つ人や岩の質にもより、耐えることは最初からあまり念頭にあるプロテクションではありません。

一方、現代のリムーバブルプロテクション、つまりカムは、基本的には、墜落に耐えることが前提です。

ハーケンもカムも回収が前提ですし、それならハーケンよりも、カムで行くほうがより安全ですね。

マイクロナッツという選択肢もあります。これについては、まだよく知りません。ハーケンよりもナッツのほうが高額なのではないかと思いますが。

■ 2グレード下のルートに行く

どちらにしても、現代のクライマーは、ルートに出る前に高い登攀力…5.9がオンサイト出来る…程度を人工壁と外岩ゲレンデで身につけてから、外岩デビューすることをお勧めします。

理由は、バリエーションルートの易しいルートでも、原則落ちれない、腐敗したハーケンやリングボルト、あるいは、オールアンカーと言われる現代の安全水準に満たないボルトが、易しいルートでは主体だからです。

これらのボルトは墜落には耐える設計強度はありません。

一般に現代のクライマーは5.7などでは落ちないですので、そう言ったルートの腐食したボルトを、墜落可能な強度があるボルトに打ち替えようとは、誰も思いません。

ちなみに落ちそうになったら、Aゼロしてください。

■ お勧め初級ルート

落ちない前提で、ですが、三つ峠は、一般にハーケンとリングボルトで構成された、マルチピッチの登攀ルートで、基本的に北アでのアルパインルートの練習場所とされています。

三つ峠を落ちずに登るには、ですが、まぁ背が高い一般的な運動能力の男性だと、最初から特に練習を必要とせず、登れるのではないかと思います。

が、例外もあります。例えば学生時代から運動神経はイマイチだという自覚がある人だったり、50代になてクライミングをスタートするなどだったり、慌て者の性格だったりする人は、事前にクライミングジムや人工壁に3か月程度通うほうが良いかもしれません。ジムグレードで、6級程度の登攀力という感じでした。

6級なんてものは、20代の男子であれば、ジムに来た初日に登れますが、それでも腕は張るし、ムーブはこなれてはいないというような感じです。女性であれば腕力がないので、ジムでは被りが出てくるので登れたり登れなかったりですが、三つ峠では傾斜が寝ていて、腕力が必要な個所はないと思うので、そう問題にならないと思います。

三つ峠は決して落ちれないマルチピッチですが、登山靴で開かれた岩場だけに、三つ峠で落ちる人というのは、結局のところ、よほどの人か、もしくはロープワークを理解する前に来てしまい、自分でセルフを外すような人です。

死者はガイド山行ですら出ていますので、現代の高齢化した初心者の方は、ジムで保険をかけてください。

昔の新人というのは、ほぼ20代の若者です。こうした人たちに楽勝で登れたとしても、現代の高齢化した新人は、きつい可能性があると思います。50代の男性新人で、登攀力を磨く前のスタート時の能力が42歳でスタートした私よりもはるかに低い人を2名、すでに見ています。30代の男性、20代の男性でも、人工壁で私より登れずに落ちている人というのは結構います。自分のタイプを見分けてください。

■ セカンドなら墜落もありのルート フリーのマルチ

三つ峠の後は、私は春の戻り雪3Pでデビューしましたが、こちらは、セカンドで行くなら墜落は許容できます。アンカーも、中間支点もしっかりとしています。

ところがリードとなると話は別です。核心は大ランナウト、です。この意味するところは、落ちると大怪我という意味です。ので、いくらグレードが5.7とはいえ、きちんとリードする能力を磨いてから、リードで登るべきです。

ので、5.9がショートでリードできるようになってから、行けば、リードにもゆとりがあり楽しめるでしょう。直上ではなく、右上したり、立木で懸垂したりも出てくるので、
ショートとは違う危険個所もあり、勉強になると思います。

これに取り付く前に十分な登攀力を持っていかないと、リードで落ちれば怪我になります。

■ ハーケンを打つ経験値を積めない

ハーケンを打つ経験値を現代のクライマーは、ヨセミテが視野に入る登攀能力がつくまで、積むことができません。

が、それは、どれくらいの登攀能力か?というと、5.12くらいです。

5.12が数本RPできる…というくらいになれば、ヨセミテのビッグウォールが視野に入ってきます。

その程度の登攀能力ができないと、ヨセミテビッグウォールは時期尚早ということですが、ビッグウォールではオールフリーは要求されていません。

あくまで、スピードが優先になり、セカンドはオールユマールも許されています。またリードであってもピッチ数が多く、とてもオールフリーでこなすのは大変すぎるので、この時になって初めて、ネイリングという技術が前進のために必要になる、ということになっています。

昔の新人が入門1年目にやったようなことを、入門して10年目でやっと必要が出てくる、ということです。

このような状況に現代のクライマーはあります。

どんな山やさんも、言ってくださることは、それぞれ真実なのですが、現代のアルパインで成長する人の困難は、言われた通りにしたら死ぬかもしれないので、自分で客観的に自分の実力を見て、最善のパスを見出すということです。

■ ハーケンを打っても良いゲレンデ 

越沢、葛葉川、松木沢などが関東エリアではハーケン打ちの練習に使用可能なゲレンデです。


Sunday, February 3, 2019

沈殿19日

■沈殿のこと

昨日は、屋久島開拓者と”沈殿”について世間話をしました。

知らない人のために解説すると、”沈殿”というのは悪天候で一日中テントから出れない、という日のことです。

黒部横断でピオレドールを取った伊藤さんは牛首尾根で19日間の雪洞泊での沈殿をしていました…ので、あるとき宴会で、伊藤さんに「そういうときって何をするんですか?」と聞きました。答えは「大マッサージ大会」 好天が3日連続しないと行動不能なそうです。

屋久島開拓者の方は5日間の沈殿の経験があるとこのこと…。もう高齢の方ですが、往時は地域山岳会でトップクライマーだった方です。

翻って一般クライマー。クライマーに人気の夏の小川山合宿ですら、雨が3日も続くと苦痛です…。山岳用テントの狭い中に3日。雨だと行動が不能ってわけじゃありません…外に出て歩くくらいはできて、登攀が不能なだけです。それでも、師匠の別荘に、「雨だから助けて」と駆け込んでくる人はいっぱいいました…

私は沈殿ではありませんが、ほとんど雨の後立を5日間縦走したことがありますが、無雪期だからいいけど、冬季ではなぁと。冬季のテント泊で3日以上って結構つらそうだと思います…。そういえば、ビバーク訓練で、雪のかなのビバーク経験が1日ありました。私だけがシュラフを持ってきていない人でしたっけ…。あの時は日中は普通に動けました。

 1)現代の世界的トップクライマーがやっていること(雪洞泊沈殿19日)、 
 2)伝統的な山岳会のトップクライマーがやっていること(沈殿5日)、
 3)山岳会の中堅レベルがやれること(ノーシュラフの雪中ビバーク1日)

の差が、分かるでしょうか?

私はよく、「そんなハードコアな山はしなくても」とか勘違いコメントを貰いますが、まったくハードコアではありません。こんなくらいでハードコアって言ったら、ハードコアが笑われます。

何が起こっているのか?ハッキリ言って一般のハイカーのレベルが低下しているのです。

私は厳冬期のテン泊も縦走も、一人でやっちゃう系ですが、その程度の人ですら、一般市民レベルの登山”者”クラス(冬季山小屋泊ができる人:一般市民の登山からすると1割の上級者)から見ると、かなーり高いレベルです。 

さらに冬は山はお休みで、夏しか山をしないハイキングレベルの登山”客”レベル(全体の9割)から見ると、かりにそういう人が私がやっている山をすれば、ほぼほぼ遭難、です。

 1)現代の世界的トップクライマーがやっていること(雪洞泊沈殿19日)、 

・・・大きなギャップ

 2)伝統的な山岳会のトップクライマーがやっていること(沈殿5日)、
 3)山岳会の中堅レベルがやれること(ノーシュラフの雪中ビバーク1日)
 4)山岳会の新人レベル(無雪期のビバーク)

・・・大きなギャップ

 5)中高年登山 (山小屋泊)
 6)一般登山 歩くだけ

現在、どんな物事でも二極化、ということが言われますが、山の世界の二極化、が分かってもらえるように解説できたでしょうか?

Friday, February 1, 2019

真砂尾根の思い出

■人気

この一か月ほど、真砂尾根の記事が人気で、一日に80PVくらいの閲覧数を稼いでいるようだ。

真砂尾根…渋いルートで良きルートだった。

ここを大学山岳部の雪稜経験が少ない人たちにお勧めするのは、良い事なのか悪い事なのか分からない…ので詳細に解説しておこうと思う。

このルートの位置づけとしては、難易度としては、ルートグレード1級の本チャンルート以前、という感じの場所だ。

危険度としてはロープが出る、ということでジャンダルム以上。したがって、一般登山者クラスはお呼びではない。

また体力度としては、雪稜で2泊3日の行程は長く、当時同行者だった先輩(50代)がよれたために、参考は短縮になったため、体力度としては高く設定してあると思う。

しかし、私(40代女性で体力は平均)の体力では、まだまだゆとりがあったため、そうやみくもな体力が必要なわけではない。

また要所要所で、人工的に人に会う施設(例:駅、山小屋)があるため、比較的安全地帯との接触があり、危急時の保険が多いと言える。

したがって、きちんとした雪稜…スタンディングアックスビレーや雪洞泊、滑落停止技術が必要な山・・・・をまだやったことがないアルピニスト候補者のような人が、ほぼ確実に落ちないだろうと見込める易しい難易度の場所を長時間かけて歩いて、雪稜慣れする、というようなことに向いている。

一般に、初心者のトップは、誰でも支点の選び方が下手であり、墜落に耐えることができる支点を作ってくれるかというと、そうではない。なので、後続に落ちてもらっては困る。

後続が落ちることは考えにくいような簡単な場所をスタート地点として、経験値を積んでいく必要がある。

私が真砂尾根に行った当時、Mさんは、私より入会年度が早かったが、クライミングにはしり込みしており、まったくやらないため、5.9の人工壁でも私が彼の代わりにトップロープを張ってやらないといけない状態だった。

ちなみにMさんは、30代前半で180cm近い大男の若者である。が、登攀は見るからに下手くそであった…。

しかも、雪稜のことも、山のことも分かっておらず、雪割れがあり、そこの通過が容易に回避できるときに、ジャンプ!と後続に強要する程度の分かっていなさ、リスク認知程度の低さ、だった。

その彼が、この山行ではトップを登り、案の定、彼においついたら、スタンディングアックスビレー中に両手を放してスマホをいじっている最中であり、これが、本気モードの山だったら、「こら!」とか、げんこつ、では済まない大失態であろう・・・が、そこはさすが先輩で、彼の甘ちゃん下限はよくわかっていらしたので、大失態を大失態とならない程度の山が選んであるのである。つまり、そこは、歩いて到着できる難易度…私としても、あきれてものが言えないわ!という程度で済ませた。

あとで彼については別の山の記録で、読者にコメントを貰った…山のセンスがない人、という評価だった…。

才能がない人は、要するに山のリスクがよくわからない人、見えない人、ということだ。たぶん、下界でもリスクは管理しておらず、人任せなのだろう…親がお金を出して店を持たせてやっているという人だったが‥‥山もずっと才能がないものかもしれないと思う…。自己責任という感性が育っていないのだと思われた。

こういうところで才能が見え隠れして、才能がない山やだなーと烙印を押されているとは、彼も気がつかなかったかもしれないが、そのこと自体が才能のなさを物語ってしまうかもしれない…というような性格の尾根だ。

■ 山は弱い者に合わせるもの

一般に、山岳部、山岳会というものは、基本的に、パーティの中で一番弱い者に合わせる、という不文律がある。

この山行では、春山合宿2度目の私のほうが、3度目の彼よりも先輩に位置づけられており、彼を一人前にしてやるために、フォローをしてやらないといけないという意味だった。

他の先輩らはみんな、当然ながら彼よりも登れ、ヨセミテ経験者すらいるわけで…。通常は入会年度が少ない人のために、山の計画を作るのであるが… 結局、2年目ですでに私の名前が彼の名前より前にあるので、私は先輩側として、彼の面倒を見てやる側に入らないといけないということだった…

じゃあ、いつ私自身が、自然物を使った支点構築を勉強する私自身のための機会を与えられるのだろうか?というと、この会にいれば、一生Mさんが”一番弱い者”扱いと決まっているということなので、私にはトップを先輩の確実なビレイで歩かせてもらえる機会はめぐってこないという意味だと理解。

この会にいては、人の成長を後押しするばかりで自分の成長をないがしろにしないといけないのだということが理解できた…。という非常に悲しい理解を伴った山だった。

山の世界では、人は優しい。というか遠慮しており、分かっていない人に、君は分かっていないよ、とは言わない…。教えてあげたほうが結果的に親切だと思うのだが。

前回の春合宿も、彼のリードで登らさせられたが、トップを行かせるのであれば、それにふさわしい知識や責任感を彼に植え付けてからにしてほしいと思った…。が、ルートは簡単だったので、そこで目くじらを立てるのは大人げない、という程度だった。鎌尾根は。

30代の男性と言えば、社会ではれっきとした大人であるが、50代の先輩たちに交じれば、坊やという位置づけになってしまう… そんないい加減なトップが作った支点であるので、セカンドで登るにしても絶対に落ちれない…。まぁ、雪稜ですから、いい加減なアイゼン歩行くらいしか落ちる要素はない。が、それにしても、責任感のないトップの確保で登るということは、確保意味なしって意味なので、むしろ、フォローで登っている側のほうが責任重大になってくる。

この話を持ち出したのは、それくらい、真砂尾根という尾根が歩き主体で易しい、ということを理解してもらうためです。ピッチグレードはないですが、あえてつけるとすればⅢ級からⅣ級マイナスくらいでしょう。デシマルで言えば、昔のではなく、現代の5.2程度です。

まったく信頼度ゼロのMさんのビレイで事が済むような雪稜という意味です。当然、後続も落ちることは全く考えられないような、易しさであるのです。

途中Mさんと先輩の一人が、懸垂を一回出していたが、そこは私と別の先輩はノーザイルで普通にクライムダウンで降りてきたところだった。

なので、ロープは念のため、だ。

■ 黒部横断

黒部横断は、日本らしいアルパインが味わえる渋いルートと思うが、

http://yukiyama.co.jp/mountain/2016/03/kurobe-oudan-ito-gyouji-sato-yusuke-miyagi-kimihiro.php

大谷原→赤岩尾根 →鹿島槍→牛首尾根→十字峡→トサカ尾根末端壁(ゴールデンピラー/11P 380m Ⅵ)→黒部別山北尾根→真砂尾根→別山尾根→剱岳→早月尾根から下山

という行動の一部分を味わうことができます。

大谷原→赤岩尾根→鹿島槍 は一般ルートです。前年度の春山合宿が鹿島槍鎌尾根でしたので、黒部横断のルートのうち、鹿島槍登頂の部分を切り取って、一番易しい難易度の部分をつまみ食いする、というルートでした。

■ 『鹿島槍研究』

昨今、アルパインのルートをする人は少ないようですが、それには、ルートの調べ方を知らない、ということもあるかと思います。

ネット全盛時代、ネットで手に入る情報だけで済ませようという人たちが多いことは残念なことですが、基本的に山の難易度や困難度などは、主観であるため、その主観の把握で間違ったことになると、大きく当てが外れることになります。

それを修正するには、多くの記述や文献を読むに限ります。一つ一つは主観の集まりであっても、それが3つ4つ、あるいは10と集まると、大体のラインというのは見えてくるものだからです。

私のお勧めは、『鹿島槍研究』を読むことです。この本は、多少議論の余地がある本だそうですが、登山体系に加え、地域研究の本を読むことで、その山の中での複数のルートの困難度が困難度順に並べてありますから、一つでもそれを知ることで、自分の中の基準とマッチさせていくことができます。

ちなみに、春山では、一般ルートの赤岩尾根のほうが、バリエーションルートの鎌尾根よりも困難と思われます。

■ 体力度

また体力度は、標高差と時間を計測することで、自分なりの数値データを持つことが可能ですので、標高差何メートルを1時間で歩けるのか?は比較的体力の目安になります。

このルートでは、一時間に標高差300mが17~8kg背負って、8時間程度、歩けない体力の人は、お呼びではないと思われます。要するに冬山最低ライン。

がちなみに、私はこの山は楽勝でした。

標高差300を1時間で歩くのは、ごく一般的なコースタイムですし、17~18kgはかなり冬山としては軽いでしょう。ロープを持った先輩は、20kgくらい行っていた可能性がありますが、その本人が最初によれて計画短縮になったような(笑)? 昨今のロープは軽くダブル60mで行くのが正しいと思われます。まぁ練習でピッチを短く切って支点工作の時間が増えても良いというならば、軽量化で40mでもありと思います。体力度を下げたい場合ですが。

このルートをご検討されている方のご参考になれば幸いです。

2013.11.23 立山 真砂岳 雪崩直後

ジャンの奥様

■ 「危険」か「困難」か?

こんな話です。 (赤字当方)
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とある日のお話、ヨーロッパのハイソなご夫婦が日本の「ビギナーズロッククライミングルート」であると聞きつけて西穂からの縦走に挑みました。

次々と現れる「困難」というより「危険」というべき難所に段々とイヤ気がしてきたらしいその若奥様を、旦那さんはなんとか宥めすかしながら、それでもようやくジャンダルムを越えてあと少しで奥穂という所までこぎつけたのです。

ところが最後の難所”馬ノ背”を前に彼女は「こんなアブナイ所を行けるワケないでショ! ワタシハモウイヤヨッ‼︎」と動けなく(動かなく?)なってしまったのです。

困り果てた旦那さんはとうとうレスキュー要請を出すに至ったのですが、通報を受けて僕たちが駆けつけてみると先のような事情であったので特に怪我をしているわけでもなく「まぁ、ほんならロープ確保しよか…」とルート工作することになりました。

そうこうする所へやはり西穂からの縦走のおじさんたちが4、5名ほどポツリポツリと馬ノ背に差し掛かってきます。

救助活動中であるので先に行っていただくことにして「どうぞ〜」と声をかけます。

すると「えぇ…」と答えるどの方も、その足取りは重くかなりお疲れの様子。

「コレ越えればもう難所はないですヨ。奥穂もすぐソコです!」という僕の言葉に頷きはするものの、何だかもうヘロヘロでみなさん通過して行かれます。

やがてロープセットも完了し、念のためショートロープで確保しながら彼女を促して馬ノ背へ取り付くと、なんと見事なバランスと身のこなしではありませんか。

そのことを後で彼女に尋ねると、ヨーロッパのドロミテなどでロッククライミングの経験はかなりあるとのこと。

でもそれは全てプロガイドとロープをつないでのクライミングであって、馬ノ背のような岩場をプロテクションもなしにひとりで歩くなんて考えられないということでした。

「うーん… そりゃあ、彼女の感覚の方がもっともなのかもしれんなぁ…  だいたいにおいて、麦わら帽子をザックにくくりつけたようなおっちゃんが、ヨタヨタと馬ノ背を歩いとることの方がオカシイよなぁ」などと思いつつ、その若奥様とロープをつないだまま小屋へと向かいました。

その道すがら、結局は馬ノ背で先行してもらった方々は全て追い抜いてしまい「こらぁレスキューせなあかん人を、オレは間違えとるんとちゃうやろか?」とつぶやく始末。

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http://bochiiko8.blog14.fc2.com/?date=20150903&page=0&fbclid=IwAR1TI5XHMxr_2dExgvfYTTLD7SQwECwKaixKkbPLCUsae0Cky0sPQ9pEVRo より引用

■ 

この事例は、まさに今日本の夏山で起きていることを、如実に物語っていると思います。

私はロープを出す山をしていますが、

 ロープを出すのはどこからか?という判断

が、世界と日本では、少し違います。一般にスポーツクライミングといわれる世界では、クライミングそのものを純粋に楽しむため、「危険」は排除することになっているため、落ちたら一巻の終わり、というような場所では、ロープを出します。

しかし、ジャンの馬の背は、スポーツクライミングのグレード(「困難さ」)からすると、非常に低いのです。ですから、そもそも、大学山岳部などの若くて体力がある人が主流だった時代に始まった日本の登山の基準では、これくらいは体力的余力があって当然なので、ロープは出さないでも、「危険」ではなかったのでしょう…

しかし、現代の登山の主力は、20代ではなく、60代、そして70代です…その方たちの体力は、20代の半分。

ということで、そのために危険が増してしまいます。

このヨーロッパの方が、ロープを出さないなら行かない、という判断をしたのであれば、ヨーロッパでは、年齢が言っていなくても、どの年齢でも、このくらいの危険度であれば、ロープを出すのでしょう…

これで日本の縦走路で起こっていることがいかにリスキーなことかわかっていただけたでしょうか?

■ 本チャン

適切な言葉がないため、本チャンという言葉を使わざるを得ませんが、日本ではロープが出るクライミングで、マルチピッチ、山岳縦走とセットで行われるものを本チャンと言っています。

日本の本チャンは、いまだに命の危険がある、非常に危険なものです。

というのは、岩が脆く、また支点類の不朽が激しく、30~40年前のものだからです。しかし、支点を構築する技術というのを磨くことが難しいです。

また歴史上の経緯として、1960年代以前は最高グレードがV級だったため、V級に5.9から現代の最高難度5.15cまで含まれる、ということになってしまっています。

本チャンルートのV級と書いてあるピッチはフリーで行くと、5.15まで出てくる可能性があるということです。もちろん、かつてはボルト連打でⅥ級で登られているのですが、ボルトを撤去する運動が盛んだったため(フリー化)、エイドルートは少々憂き目にあります。

ので、V級A1と言えども、フリー化の結果、非常に大変になる可能性があるということです。

しかも、現代のクライマーは、時間的制約のために昔のクライマーに比較して、体力で劣る傾向にあります。

私の現在の知見では、5.12は昔の人でもトップを登るクライマーは標準的に登っていたグレードであるように思います。今の人はそのグレードに達するのは、昔と比べると比較的環境(ジムや人工壁)に恵まれているのではないかと思われます。

■ 危険が増せば困難が下がり、困難が増せば危険が減る

登山というゲームの本質として、危険が増せば、困難が下がり、困難が増せば危険が下がるというトレードオフの関係にあります。

ので、ジャンダルムでロープを出さないのは、困難度が低いからですが、誰にとっての困難度か?という面で、現代の登山者はかつてのように若者でないことや、組織された登山者でないため知識的にも自分が登れる段階に成長してから来ているわけでない、という面が色濃いです。

Aさんにとって困難ではなくても、Bさんにとっては困難ということがあり得ます。

■ 40kg 5.12

しかし、それでは統一した危険度と困難度をバランスさせて登山というゲームを成立させ難くなりますから、登山者として本チャンに出て良い、一般的なレベルというものがあります。

それは暗黙知で、大体図られていたようですが…

敢えて言葉にすると、40kg 5.12 です。40kg担げて、5.12が登れる。

若い人には比較的達成が容易なレベルだと思います。60代を過ぎて、登山を始めたような方には年寄りの冷や水ですので、チャレンジするにしても徐々に頑張ってください。

ちなみにどちらか一方で達成している人は、比較的多いです。フリーだけに専念すれば、60代でも5.12は達成可能な気がしますし、歩荷だけ、つまり縦走だけに専念しても40kgというのは長時間でなければ、男性は筋肉量が多いので、60代でも大丈夫です。

しかし、両方というのは、若いころ、トップクライマーで鳴らした人でも、なかなか、それを維持するのは厳しいレベルではないでしょうか。

歩荷に必要な足の筋力は重しとなって登攀にとってはトレードオフの関係にあるからです。