## ナルキッソスの末裔
陽光が降り注ぐ山々を軽やかに駆け抜ける青年、レイ。彼は生まれ持った類稀なる登山技術で、いとも簡単に岩壁を登り、山頂へと到達する。その姿はまるで、神話の英雄のようだった。
レイは幼い頃から周囲から賞賛され、自らの才能に絶対的な自信を持っていた。大学時代は登山部に所属し、数々の難峰を制覇してきた。しかし、彼の心の中には常に虚無感があった。どんな難関を突破しても、すぐに達成感は薄れ、更なる高みを求めてしまう。
ある日、レイは誰も登ったことのない未踏峰に挑戦することを決意する。仲間の制止も聞かず、単独で山へと向かう。
登山道のない険しい山を、レイは驚異的なスピードで登っていく。しかし、高度が上がるにつれて、彼の心は次第に狂気に染まっていく。岩肌に映る自分の姿に見とれ、ナルキッソスのように自らの美しさに陶酔していく。
山頂にたどり着いたレイは、達成感に満ち溢れ、思わず自分の姿を写真に収める。その瞬間、足元が崩れ、彼は奈落の底へと落ちていく。
意識を失いながら、レイは自らの愚かさを悟る。自己陶酔のあまり、周囲の危険を顧みなかった自分が招いた結果だった。
彼の遺体は数日後、山の麓で発見された。その傍らには、ナルキッソスの花がひっそりと咲いていた。
**教訓**
才能に恵まれた者は、常に謙虚さを忘れるべきではない。自己陶酔は、時に取り返しのつかない悲劇を生み出す。
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