冒険を愛する読者の皆さまへ。
想像してみてください。
「ヒマラヤの未踏峰で、5日間。
生きた心地がしない絶壁に張り付いている自分を」
さぞかし、悲壮感あふれる
「鉄人のような顔」をした男を想像しませんか?
でも、ポール・ラムスデンに会えば、
そのイメージは一瞬で崩れ去ります。
彼は、死の淵を歩いてきたエピソードを、
まるで「週末のキャンプで雨に降られた」
くらいの軽妙なトーンで話すのです。
かつて、ポールには 「寒さを感じない鉄人」という噂がありました。
しかし、最近の彼はこう言って笑います。
「いやあ、去年の遠征で凍傷になってね。
小指の先を、少し失くしちゃったんだ。
もう『寒さに強い』なんて大口は叩けないよ(笑)」
指を失う。
それは、クライマーにとって 絶望的な出来事のはずです。
ところが彼はそれを 自分の伝説にツッコミを入れるための
「ネタ」
にしてしまう。
この軽やかさ。 この精神の柔軟性。
これこそが、彼を何十年も
世界の第一線に留まらせている「本質」なのです。
彼は今、自伝を書いています。 しかし、一つ悩みがあるそうです。
「私の本は、ちっとも面白くないかもしれない」
なぜなら、
「劇的な悲劇が一つも起きないから」
遭難して、奇跡的に助かる。
そんなエピソードは、彼に言わせれば
ただの「計画ミス」
でしかありません。
「慎重に準備して、リスクを回避して、
予定通りに、静かに生還する。
……うーん、地味だよね」
そう語る彼の目は、 最高に皮肉っぽく、輝いています。
彼は、技術だけを教える男ではありません。
若いクライマーに、いつもこう伝えます。
「どんなに最悪な状況でも、
ジョークの一つも言える余裕を持て」
視界ゼロのホワイトアウト。
3回もクレバスに落ちる。
そんな絶望的な状況で、自分を救うのは
屈強な「筋肉」
ではありません。
「事態を笑い飛ばせるメンタリティ」です。
パニックは死を招きますが、
皮肉は「冷静さ」を連れてくるからです。
人生という名の高い壁を登っているとき、
私たちは、ついつい深刻な顔になりがちです。
でも、そんな時こそ、 ポールのこの言葉を思い出してください。
「指をなくしたって?
まぁ、これで少しは軽量化できたかな」
それくらいの余裕があれば、
どんな絶壁だって、最高の遊び場に変わるはず。
あなたの今日の「不運」も、
数年後には、極上のジョークに変わっていますように。
参考:https://www.youtube.com/watch?v=DUN_2_MeHjE
No comments:
Post a Comment