■ 【ゆっくり解説】俺に任せて先にいけ!後輩を助けたリーダーの結末
【2015年 阿弥陀岳遭難事故】
■ 感想
この遭難は、このブログでも取り上げたので、最近Youtubeで動画が作られているので、追加の考察をします。
”指導”に依存することなく、現代の登山者は、一般登山者であっても、大学山岳部であっても、自分の頭で、つまり自頭で、その登山…この場合の阿弥陀北稜…のリスクを考えられるようにならなくてはいけません。
https://amzn.to/3vMv5fV 日本登山大系 八ヶ岳
阿弥陀北稜のリスクを調べると
1)山頂からの道迷い下山…ルートファインディングに習熟してから登れ、と言われます
2)中岳沢の雪崩 …超有名ですが、八つ自体が雪が少ないです
です。八ヶ岳全般のリスクは、一般ルートでも同じです。つまり、一般ルートを歩いているときに、急激な悪天候にどう対処するのか?は身に着けられるということです。
1)急激な悪天候による視界不良(南岸低気圧)
です。寒冷もリスクに入りますが、現代は装備が向上して、寒冷による冷えなどの被害はよほど間抜けな人向けという感じです。(例:縦走中の凍傷=ダブルのブーツを履いていない)
いわゆるビーコンの出番はあんまりない山です。八ヶ岳は。しかも、ビーコンって持っていても、雪崩を避けることにはなりません。事故が起きた後に遺体を捜すのに役立つだけです。
■ どうリスクに対処するか?
1)阿弥陀山頂からの下山でのルーファイ
ここで、リスク認知されず、山の反対側に降りてしまった最初のミスは、阿弥陀北稜のリスクをきちんとマスクしてなかったことが分かります。
一般に、一般ルートの阿弥陀岳を歩いたことがある人だけが、バリエーションルートに進むことが許されるものです。
なので、このリスクをマスクするには
1)一般ルートである、赤岳方面からの阿弥陀山頂をすでに登頂している
2)次に難しいルートである御小屋尾根からの阿弥陀登頂をしている
3)山頂でコンパスを出して南北エラーなく方角を確認するスキルを身に着けている
の3つの条件を満たしている必要があります。
一般に、山やの世界では、阿弥陀北稜はかなりなめられています。どれくらいかというと、一升瓶を背負って宴会した翌日でも登れるくらい、簡単さ、と思われています。しかし、だれにとってそうなのか?お酒に強いとか、体力の絶頂期にいる、とかでしょう。
ルートコレクターのルートコレクション1本目にされることも多く、ベテラン登山者の間では一般ルート並みに楽勝という認識です。いや、阿弥陀北稜くらい、楽勝でこなせないようでは、山や失格というほうがあっていると思います。
しかし、山をなめるこのような発想は、あまり薦められたものではありません。動画も楽勝風情のが一杯出ていますが、そういうものにほだされないように気を付けましょう。
山はそれぞれの段階で学ぶべきことを学んでいない山やを食い殺します。
ちなみに、判断としては、登れたところを
同ルート下降
が、ルートファインディングが核心の場合は、最も保守的な手段になります。したがって敗退の経験は、役立つものです。
2)中岳沢の雪崩
雪崩に関するリスクの認知が大きすぎ、逆方向に降りてしまった後も、どんどん下降することになっていますが…危険エリアから脱出したら、次のリスクを作り出さないように、そのまま、船山十字路の下降し、美濃戸口に降りれば、遭難にはならなかったと思います。
そうしなかったのは、ワンビバーク=遭難という認識が欠如しているためではないか?と思います。
一泊でもビバークしたら、すでに遭難した、ということですので、北稜を登ろうとして失敗したのに、なぜ南稜を登り返すのでしょうか?山を2個登ることになりますよね?
大学生レベルでは、登山経験は高校山岳部だったとしても10年もたまっていない訳なので、この時点で、山岳部顧問に判断を仰げば、下山になったのではないでしょうか?
阿弥陀岳、という山への敬意を欠いた登山の仕方…つまり、易しい順に登っていないこと…で、いざというときに使えるエスケープルートへの知識が足りていなかったのかもしれません。御小屋尾根の途中には、鉱泉側の登山道に降りる短縮路もあります。
雪崩のリスクは八ヶ岳にも当然ありますが、豪雪の山ではないですから、雪崩を警戒するあまり、ほかのもっと基礎的なリスクを軽視しているような気がします。
3)悪天候への警戒
八ヶ岳という山域の主たる遭難リスクが悪天候(ヤツの場合、南岸低気圧)、というのは、結構、常識です。というか、冬の山をするなら、当然、常識です。それを踏まえていない行動のような気がします。
この日は、私も天狗岳にいましたが、朝6時はものすごく晴れており、2時間後の8時で前も見えない横殴りの吹雪でしたので、当然、山頂はキャンセルして、下山していました。
他の大学山岳部は、天狗岳の登頂したようですが、天狗は、ルートが登頂したルートの同ルート下降です。 迷う箇所ないです。
悪天候でもツッコむというのは、自分の登山のレベルを考慮して行わないといけないです。
つまり、視界不良の中で、ルートファインディングをミスらない、という保険がついていれば、とって良い選択肢です。
ものすごく上級のクライマーでも、悪天候では山を下りる保守的な算段をします。
登山というのは、判断の出来不出来を学ぶゲームなのに、常に強気の判断をしているこのキャプテンの判断は、私にはまったく理解できません。
せっかく山頂について、ロープをつないだまま滑落というのは…登攀よりも、2級の歩きが下手くそだったということなのでしょうか…
ビバーク後により大きなバリエーションをこなして戻るって、最初から大きすぎる負担を強いる判断のように思います。
■ ヒマラヤ503号
に横山勝丘さんのK7の記録が掲載されていますが、大学山岳部などが判断を学ぶ教材、資材とするのに、良い資料のような気がします。
判断を学ぶのが登山、
ということ自体が教えにくい現代、トップクライマーの判断の在り方を学ぶ資料として、取り寄せてみたらどうか?と思います。
■ 過去記事
学習院大学阿弥陀北陵
八ヶ岳は天候核心
阿弥陀遭難を考える
阿弥陀北陵から学ぶ ベテランとの対話
学習院大学の遭難 推測
阿弥陀遭難 続報
八ヶ岳のバリエーションルート
No comments:
Post a Comment